LIFE LOG(八ヶ岳南麓から風は吹く)

八ヶ岳南麓から風は吹く

大手ゼネコンの研究職を辞めてから23年、山梨県北杜市で農業を営む74歳の発信です/「本題:『持続可能な未来、こう築く』

17.6 巨大都市の人々の地方への分散移転の開始と、その人々を受け入れての州づくりと地域連合体づくりの開始 

17.6 巨大都市の人々の地方への分散移転の開始と、その人々を受け入れての州づくりと地域連合体づくりの開始 

 ここでは、環境時代を導く「三種の指導原理」(4.2節)に続く、「都市および集落の三種の原則」(4.4節)を根拠としながら、その三原則を新国家建設に向けて適用してゆこうとするものである。

そもそもその三原則とは、1つは、小規模分散の原則であり、1つは、経済自立の原則であり、1つは、政治的自決の原則というものであった。

 ここでは、それらの三原則の考え方を土台におきながら、なお次のような考え方をも付加して、それらを持続可能な新国家建設構想に生かしてゆく。

 まずは中央政府は、国民に説明した新国家建設構想に従って、地形、気象、文化等を考慮して州と地域連合体の概略的な区画割りを定め、それを公表し、それが全国民に周知徹底された時点を見計らって、都道府県を廃止して州づくりへ、市町村を廃止して地域連合体づくりへと着手する。

それは、国土に均衡のとれた人口分布を実現するためであり、巨大都市からの膨大な量の廃棄物(排ガス、排水、汚染水、廃物、重金属等)による生態系への過度な負荷を減らして自然循環を促進するためである。そのために、既存の巨大都市の人々には、それが可能な人々には地方の移住してもらい、人口とその範囲の縮小を図るのである。そうやって、全国的に小規模・分散型の都市づくりを開始する。

 その際、中央政府は、従来の地方政府と連携して、政府の地方移住促進政策に協力してくれる人々に住居と土地を斡旋する。その際、今や、特に地方に急激に増えている「空き家」を、その所有者には協力と理解を呼びかけ、積極的に活用する。その場合、不動産業者に任せると、移住希望者は地方の事情には不案内なために、中にはどうしてもいる悪徳不動産業者の餌食になる人が出る可能性があるので、そこは、法律と条例をもって、透明性と公平性、公正性をもって対処する。

 なおその際、政府の地方移住促進政策を円滑に進めるためには、事前に従来のこの国の土地所有制度に厳然としてある「絶対性」(12.3節の⑵を参照)という悪しき慣例を打破する政策を法律の裏付けをもって設けておく必要がどうしてもある。もちろんそれは国会の役目であるから、国会の政治家はなぜその新法が不可欠か、その理由を、日本の特に明治以降の土地政策の歴史を調べるとともに、その絶対性なる考え方がいかに時代遅れであると同時に、世界的にも遅れた考え方であり、どれほど民主的な地域づくりの障害になるかを、国民を説得できるまでに勉強しておかねばならない。

 また、その州づくりや地域連合体づくりに向けて特に重要なのは、その地域に該当する人々が、互いに自律的に自立して新しい経済とその経済システム(第11章参照)を構築して行けるよう、中央政府が財政支援をしながら促すことなのである。

 いうまでもなく、その時には、新選挙制度によって本物の政治家たちが誕生しているはずであるから、彼らが先頭に立って、元々の地元住民や新規移住者の声を公平かつ公正に聞きながら、新しい経済とそのシステムづくりに議会活動を活発化することで規則づくりと計画づくりをもって貢献してゆく。

 一方住民の側も、自分たちが選んだ代表とともに、日本国の建国以来初めて、自分たちの住む地域は自分たちの手で創り上げてゆくことができるのだ、ということを実感を持って学んでゆく。そしてその体験を通じて、人々は皆、民主主義議会政治というものについて、本当の意味で体系的に学んでゆくことになるのであろう。そしてその時には多分、例えば自由という概念も、選挙や議会という概念についても、これまでとは全く違った捉え方ができるようになっているのではないだろうか。しかし、実は人々の意識がそうなることこそがその地域が政治的にも自決できる地域になっているということだと、私は考える。

 そしてそうした意識が人々の「当たり前」になれば、そこから先は、誰もが主体的に、つまり真の主権者として、自分たちの地域づくりを自分たちでどんどん進めてゆくことができるようになるのだろうし、国全体も、その時こそ、真の民主主義の国となってゆくのであろう、と私には想われる。