LIFE LOG(八ヶ岳南麓から風は吹く)

八ヶ岳南麓から風は吹く

大手ゼネコンの研究職を辞めてから23年、山梨県北杜市で農業を営む74歳の発信です/「本題:『持続可能な未来、こう築く』

16.5 私案としての新憲法の「本文」—————————(その1)

16.5 私案としての新憲法「本文」————(その1)

 以下に示す私案としての新憲法草案は、第8章にて述べてきた国家に対応するものとして提案するものであり、その国家の基本法とするものである。

その国家の基本法とする憲法を、本章において述べて来たことのすべてを勘案し、具体的な形にして表わしてみる。

その際、私は特に現行のドイツ(ドイツ連邦共和国)の基本法と、ロシア連邦憲法をも参考にさせてもらった(高橋和之編「世界憲法集」岩波文庫)。

その理由は、日本の現行憲法に比べてはるかに詳細でかつ具体的であるからだ。特にドイツの基本法は人権を基本権として、多岐にわたってわかりやすく詳細に明らかにしており、また財政制度も極めて詳細に明文化している。それは特に日本の現状の最悪の財政状況にとっては大いに参考になると思う。また、ロシアのそれは、国の中央政府と地方政府の法的地位と権限そして管轄事項を明確化しているのである。

 明文化されている内容が詳細であるということは、それだけ憲法の条文における抽象性、曖昧性を排除しているということであるから、憲法を運用する者にとっては彼らの「恣意」を介入させにくくさせているということであり、また憲法を解釈してそれを日常的に使おうとする者にとっては各条文の解釈に確信を持てるようになるということであり、憲法への信頼性が高まると同時に憲法を使いやすくなるということを意味する。

 ということで、以下に提案する私案としての新憲法案が現在の日本国憲法とどこがどう違うのか、どういうことが明確になっているか、等々に着目しながら、批判的に各条文を見比べていただければ幸いである。

 

第一章 憲法体制の基本原則としての国家の義務と目的と理念、連邦と連邦の構成主体の権限

区分、地方自治憲法の役割、憲法の依拠する原理と役割、権力の根拠、権力の分散、連邦の憲法および法律の優越、憲法体制の基本原則の優越

第一条 共和制の下での連邦制法治国家

第1項 日本連邦は、共和制の統治形態をとる連邦制法治国家である。

第2項 日本連邦と日本という名称は同義である。

第二条 国家の目的・理念

第1項 国家として存立するその目的は、国民の生命と自由と財産を最優先に守りながら、三種の主導原理を満たす範囲で、国家の成員たる国民の望むところの最大の満足を得ることができるような条件を創り出すことにある。

第2項 国家の理念は、民主主義と立憲主義を土台としながらもなお生命主義の実現をも目ざし、もって世界の平和の維持と人権の擁護と環境の蘇生と保護に貢献することにある。

 ここに、生命主義とは次の三種の原理「生命の原理」と「新・人類普遍の原理」と「エントロピー発生の原理」の総称である。

第三条 国民主権

第1項 日本連邦における政治権力の唯一の源は、多民族・多人種からなる日本の国民であり、そのすべての政治権力は法に由来するものであり、したがって国民の合意の下に成立する。

第2項 国民は主権者であり、その主権という権力は、直接に、かつ国家権力機関および地方自治機関を通じて行使する。

第3項 無記名に成る国民投票および自由選挙は、主権者たる国民の権力の最高の直接的表明である。

第4項 何人も日本連邦において国民の権力を収奪することはできない。権力の収奪または権限の横領、または権力の委譲は、連邦の法律に拠って訴追される。

第四条 日本連邦の主権

第1項 日本連邦の主権は、その全土に及ぶ。

第2項 日本連邦憲法は、日本連邦の全土において最高法規である。

第3項 日本連邦は、領土の保全と不可侵を保障する。

第五条 連邦制の基本原則

第1項 日本連邦には、その構成主体として州および地域連合体が存在する。

第2項 州は独自の憲法および立法権を有し、地域連合体は、独自の憲章および立法権を有する。

第3項 日本連邦の連邦制度は、日本連邦の国家的統一性、国家権力体系の単一性の下で、日本連邦の国家権力機関と日本連邦構成主体の権力機関との間の管轄事項および権限の区分ならびに日本連邦の諸民族・諸人種の同権および自決に立脚する。

第4項 すべての日本連邦構成主体は、連邦国家権力機関との相互関係において同権である。

第六条 日本連邦の国籍

第1項 日本連邦の国籍は、連邦の法律に従って取得され、かつ喪失される。

民族ないし人種の如何にかかわらず、日本連邦の国籍を有する者を日本国民ないしは日本人と称する。

日本連邦の国籍は単一であり、その取得事由にかかわらず平等である。

第2項 日本連邦の国民は、その領土内において日本連邦憲法で規定されたすべての権利と自由を有し、かつ平等な義務を負う。

第3項 日本連邦の国民は、国籍を剥奪されず、また国籍を変更する権利も剥奪されない。

第七条 土地・天然資源の所有権

第1項 土地および他の天然資源は、当該領土に居住する国民の生活および活動の基盤として、州の管轄下において利用され、かつ保護される。

第2項 土地および他の天然資源は、私的所有、国家所有、自治体所有およびその他の所有形態の下に置かれる。

第八条 権力の分立、権力の根拠、権力行使の制限

第1項 政治権力は人民から負託されたものであり、人民の同意と任命に根拠を持つ。

したがってその権力の行使はつねに法に裏付けられていなくてはならない(法の支配)。

そうでない場合はその権力の行使は無効であり、国民はその行使に従う義務はない。

第2項 日本連邦における国家権力は、立法権、執行権、および司法権の分立に基づいて行使される。立法権、執行権、および司法権の諸機関は互いに独立である。
その場合の独立には、人事も予算も含まれる。

第九条 国家権力体系の単一性、国民に対する統治権と説明責任

国家権力機関による国民に対する統治は、統治システムのどの一要素も、最終的には、合法的に最高な一個の強制的権威と権力を持ち、中央政府を公式に代表して国民に対して説明責任を負える大統領の支配下に置かれる。

第十条 連邦と連邦構成主体の権限区分

第1項 日本連邦は、連邦、州、地域連合体より成る。

第2項 日本連邦の国家権力は、日本連邦大統領、連邦議会(上院および下院)、日本連邦政府および日本連邦裁判所が行使する。

第3項 日本連邦と日本連邦構成主体の権力とその区分は、日本連邦と日本連邦構成主体によって組織された国家権力機関によって定められる。

第4項 日本連邦と日本連邦構成主体との間の管轄事項および権限の区分は、この憲法、管轄事項および権限の区分に関する連邦法律によって定められ、実施される。

第十条 地方自治権の保障

第1項 日本連邦では、地方自治が認められ、かつ保障される。地方自治は、その権限内で自立的である。地方自治機関は、国家権力機関の体系には入らない。

第2項 日本連邦における地方自治は、州および地域連合体の住民によるその地方固有の問題の自主財源の確保、法制度決定を含む自主的決定、並びに自治体の所有する財産の占有と利用と処分を国家として保障する(自治権の保障)。

第3項 地方自治は、住民投票、選挙、その他の直接の意思表明の方法を通じて、または選挙およびその他の方法によって形成された地方自治機関を通じて、市民によって公務員をコントロールすることにより行使される。

第4項 中央政府からの補助金地方交付税交付金等の用途については、当該自治体の市民の要求に基づく議会の自由裁量を国家が保障する。

第5項 連邦政府の執行権は地方政府としての州政府または地域連合体政府の執行権を妨げない。
したがって、政令および省令の類は廃止される。それは日本連邦の法体系を国民にとってわかりやすくするためでもある。

第十一条 連邦の憲法および法律の優越

第1項 日本連邦憲法は最高の法的効力と直接的効力を有し、日本連邦の全土で適用される。日本連邦で採択される法律およびその他の法令は、日本連邦憲法に違反してはならない。

第2項 国家権力機関、地方自治機関、政治家、公務員、市民および市民団体、その他の全ての法人は、日本連邦の憲法および法律を遵守しなければならない。

第3項 法律は公布されなくてはならない。公布されない法律は国民には適用されない。
なお、閣議は国権の最高機関である国会が議決した法についての最上で最適な執行方法を議論して決める場であって、法案を決議する場ではない。したがって閣議決定および決定されたその事項は「法の支配」の下に強制力を有する。

第4項 一般に承認された国際法の原則と規範および日本連邦の締結する国際条約は日本連邦の法体系を構成すると同時に法体系を拘束もする。

また、日本連邦の締結する国際条約が法律の規定とは別の定めをしている場合、国際条約の規定が優先される。

 第十二条 憲法の役割

憲法は、国家の構成員である国民一人ひとりが、自分自身の主人公として、自分で自分の行動を、その条文を読むことにより、誰に判断を仰がなくとも自分で判断して決めることができるようになることであり、同時に、国家が国家として採っている行動と進んでいる方向についても、それが主権者である国民すべてによって予め信任され合意された方向に一致しているか否かということを、国民一人ひとりが自身で判断できるようになることである。

また憲法は、政府の名を語る者に対しては権力の乱用を禁止し、行使の行き過ぎを制限すると同時に、国民に対しては、政府の権力行使が法に基づいているか否かについて不断に監視する義務を負わせる。

それは、憲法そのものが政府を縛り制限するという行動を起こすわけではないからである。憲法の精神を憲法の名において行動をもって示すのは人だからである。人、とくに政府を占める人は、往々にして権力行使の仕方とその限界において間違いないしは勘違いを犯し易いからである。

十三条 憲法体制の基本原則の優越

第1項 本憲法第一章の規定は、日本連邦の憲法体制の基本原則をなし、本憲法において定められた手続きによらなければ変更できない。

第2項 本憲法のいかなる条文も日本連邦の憲法体制の基本原則に違反することができない。

 

第二章 国民の基本権と義務

 第十四条 人間の尊厳、人権

第1項 人間の尊厳は不可侵であり、かつ不可譲である。これを尊重し、保護することは、国家のすべての権力機関の義務である。

第2項 日本国民は、この考え方に基づき、世界におけるあらゆる人間共同体に対して、その人権に対する理解と信念を、あらゆる機会を通じて表明する。

第3項 以下の基本権は、直接に適用される法として、立法権、行政権そして司法権を拘束する。

 第十五条 人格の自由な発展、生命と身体に瑕を負わされない権利

第1項 何人も、他人の権利を侵害せず、かつ、合憲的秩序または人倫原則に反しない限りにおいて、自己の人格を自由に発展させる権利を有する。

第2項 何人も生命を守られる権利、身体に瑕を負わされない権利を有し、かつ人身の自由は不可侵である。これらの権利に対する侵害が許されるのは、法律に根拠がある場合に限られる。

 第十六条 平等

第1項 すべて人間は、法律の下に平等である。

第2項 男性と女性は同等の権利を有する。

国家は、女性が男性と同権となることが現実に達成されるよう促進し、現に存在する不利益を除去すべく働きかけなくてはならない。

第3項 何人も、その性別、出自、人種、民族、言語、故郷および門地、信仰、宗教的または政治的な見解を理由として、不利または有利に取り扱われてはならない。

何人も、その障害を理由として、不利な取扱を受けてはならない。

 第十七条 信仰と良心の自由、宗教的活動の自由、良心的兵役拒否

第1項 信仰、良心および宗教上もしくは世界観上の告白の自由は、これを侵してはならない。

第2項 妨害されることのない宗教活動は、これを保障する。

第3項 何人も、その良心に反して、武器を伴う軍務を強制されてはならない。

 第十八条 表現の自由、出版の自由、報道および放送の自由、学問および芸術の自由

第1項 何人も、言語、文書、および図面によって、自己の意見を自由に表明し、流布させる権利、ならびに一般に接近可能な情報源から妨げられることなく知る権利を有する。

出版の自由、ならびに放送および映画による報道の自由は、これを保障する。

検閲や監視は許されない。

第2項 これらの権利は、一般的法律の規定、青少年保護のための法律上の規定、および人格的名誉を保つ権利によって制限を受ける。

第3項 芸術および学問の自由は、これを保障する。

研究および科学は、その結果が人類の福祉や世界の平和と安全にとって脅威となる可能性を予見できるものに限っては、その自由は制限を受ける。

 第十九条 婚姻と家族

第1項 婚姻および家族は、国家的秩序の観点から、特別の保護をける。

第2項 子どもの保護および教育は、親の自然の権利であり、第1に親に課せられる義務である。この義務については、国家共同体がこれを監視する。

第3項 子どもは、親権者に故障があるとき、または子どもがその他の理由から放置されるおそれがあるときには、法律の根拠に基づいてのみ、親権者の意志に反して、これを家族から引き離すことが許される。

第4項 すべての母親は、国家共同体の保護と扶助を請求することができる。

第5項 婚外子に対しては、立法によって肉体的および精神的発達について、並びに社会におけるその地位について、婚内子と同様の条件が与えられなければならない。

 第二十条 学校制度

第1項 すべての学校制度は各州の監督の下にある。

第2項 親権者は、子どもを宗教の授業に参加させることについて、決定する権利を有する。

第3項 宗教の授業は、非宗教学校を除く公立学校において、正規の授業である。

宗教の授業は、国家の監督権を害しない限りにおいて、宗教共同体の狭義に沿って行われるものとする。いかなる教員も、その意志に反して、宗教の授業を行うよう義務づけられてはならない。

第4項 私立学校を設立する権利は、これを保障する。

公立学校の代用としての私立学校は、国家の許可を要する。

この認可は、私立学校がその教育目標および施設ならびにその教職員の学問上の養成において公立学校に劣らず、かつ親の資産状況による生徒の特別扱いが助長されない場合に、これを与えるものとする。

この認可は、教職員の経済的および法的地位が充分に確保されない場合には、拒否されねばならない。

第5項 私立の国民学校は、教育行政官庁が特別の教育的利益を承認する場合にのみ、または、親権者の申し立てに基づき、それを宗派共同学校として、または、宗派学校もしくは世界観学校として設立することが求められ、かつ同種の公立の国民学校がッ市町村(地域連合体)内に存在しない場合にのみ、これを認めるものとする。

 第二十一条 集会の自由

第1項 すべての日本人は、届け出または許可なしに、平穏かつ武器を伴わずに、集会する権利を有する。

第2項 この権利は、屋外の集会については、法律に拠り、または法律の根拠に基づき、これを制限することができる。

 第二十二条 結社の自由

第1項 すべての日本人は、結社および団体を結成する権利を有する。

第2項 その目的もしくは活動が刑事法規に違反し、または、合憲的秩序もしくは国際協調主義に反する団体等は、禁止される。

第3項 労働条件および経済的条件を維持し促進するために団体等を結成する権利は、何人に対しても、かつすべての職業に対して、これを保障する。

この権利を制限し、または妨害することを企図する合意は無効であり、これを目的とする措置は、これを憲法は認めない。

 第二十三条 信書、郵便および電気通信の秘密

第1項 信書の秘密ならびに郵便および電気通信の秘密は、これを侵してはならない。

第2項 制限は、法律の根拠に基づいてのみ、これを命ずることができる。

その制限が、自由で民主的な基本秩序、または連邦の存立もしくは安全の保障に資するときは、これについて関係者に通知しない旨、および、裁判所への出訴に代えて、国民代表が選任した機関もしくは補助機関による事後審査に付する旨、法律でこれを指定することができる。

 第二十四条 職業選択の自由

第1項 全ての日本国民は、職業、職場、および養成所を自由に選択する権利を有する。

第2項 何人も、伝統的で一般的な、全ての人に平等に義務付けられる公的な勤務の枠内にある場合を除き、特定の労働を強制されない。

第3項 強制労働は、裁判によって命じられる自由の剥奪の場合にのみ、これを認めることができる。

 第二十五条 住居の不可侵

 第二十六条 所有権、相続権、公用収用

第1項 所有権および相続権は、これを保障する。その内容および限界は、法律でこれを規定する。

第2項 所有権には義務が伴う。その講師は、同時に公共の福祉に資するものでなくてはならない。

第3項 紅葉収容は、公共の福祉のためにのみ認められる。紅葉収容は、法律により、または補償の方法および程度を規定する法律の根拠に基づいてのみ、これを行うことが許される。その補償は、公共の利益および関係者の利益を正当に衡量して、決定されなくてはならない。保証につき争いがあるときには、通常裁判所に出訴することができる。 

 第二十七条 社会化

 第二十八条 国籍剥奪、引渡

第1項 日本国籍は、これを剥奪してはならない。国籍の喪失は、法律の根拠に基づいてのみ、かつ、当人の意思に反するときには、当人がそれによって無国籍にならない場合に限り、認められる。

第2項 日本人は、何人も、外国に引き渡されてはならない。国際裁判所への引き渡しについては、法治国原理が維持されている限りで、法律によりそれとは異なる定めを置くことができる。

 第二十九条 庇護権

   第1項 政治的に迫害された者は、庇護権を有する。

第2項 難民の庇護権については、連邦上院の同意を必要とする法律で、これを規定する。

 第三十条  請願権

 第三十一条 基本権の喪失

第1項 表現の自由、特に出版の自由、教授の自由、集会の自由、結社の自由、信書、郵便および電気通信の秘密、所有権または庇護権を、自由で民主的な基本秩序に敵対するために乱用するものは、これらの基本権を喪失する。それらの喪失およびその程度については、連邦憲法裁判所がこれを裁定し、宣告する。

 第三十二条 基本権の制限、法人の基本権、出訴権の保障

第1項 この憲法に従い、基本権が、法律によりまたは法律の根拠に基づいて制限されうる範囲内において、その法律は、一般的に適用されるものでなければならず、単に個別事案にのみ適用されるものであってはならない。加えてその法律は、条項を示して当該基本権を引照しなければならない。

第2項 基本権は、いかなる場合であっても、その本質的内容において侵害されてはならない。

第3項 基本権は、性質上、国内法人に適用可能な限り、これに対しても適用される。

第4項 何人も、公権力によって自己の権利を侵害された時には、出訴することができる。他に管轄が定められていない限りにおいて、通常裁判所に出訴することが可能である。