LIFE LOG(八ヶ岳南麓から風は吹く)

八ヶ岳南麓から風は吹く

大手ゼネコンの研究職を辞めてから23年、山梨県北杜市で農業を営む74歳の発信です/「本題:『持続可能な未来、こう築く』

14.5 本物の政治家による三種の指導原理に依拠する本物の政府の新組織づくり

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14.5 本物の政治家による三種の指導原理に依拠する本物の政府の新組織づくり

 では、既述の「本物の政府」は誰がどう作ったらいいのであろう。その場合、どのような考え方を基準にして、あるいは土台にして作っていったらいいのだろう。

そしてどのような政府組織にしたらいいのであろう。

それは、中央政府についても、地方政府についても、同様に言えることである。

 拙著のこれまでの論理からすれば、本物の新政府を構築する際の土台とすべき考え方あるいは理念とは、既述してきた三種の指導原理となる。

すなわち《生命の原理》と《新・人類普遍の原理》と《エントロピー発生の原理》である(第4章)。

 そしてこれからの環境時代にふさわしい国づくりのあり方として示してきた姿からすると(第8章)、その場合の特に中央政府のあり方は、当然ながら、いわゆる「小さい政府」となる。

なぜなら、極力「中央集権」の統治体制は改めて、地方に可能な限り権力と権限を委譲し、真の意味での「地方分権」「地域自治」を実現してゆくことが、今後生じるであろう危機の分散を図り、この国の安全保障を高める意味で、この国をより持続可能な国へと導いていってくれるであろう、と期待されるからだ。

 では、具体的には、どのような組織構成とすべきなのだろう。

ここでは、中央政府についてのみ考える。

 なお、ここで明確にしておかねばならないことがある。それは、以下のこうしたことを議論し決定できるのはあくまでも国権の最高機関としての国会であって、決して内閣ではないということである。つまりこの案件は政府の内閣で議論できる問題でもなければ、決定できるような代物ではない、ということである。

 

 そこで、まず考えるべきことは、既存の府省庁は、果たして今後もそのまま存続させていいのか、ということであろう。つまり、これからの時代は、ポスト近代であり、また地球環境を考えるなら、資本主義も終焉を見たとしなくてはならない「環境時代」であるからして、その環境時代にふさわしい府省庁なのか、という検討である。そしてむしろ反対に、環境時代を生きるにあたって、新たに作らなくてはならない府省庁とは何かという検討であろう。

 そう考えた時、私は、是が非でも廃止すべきとするのは、文部科学省であり、国土交通省であり、経済産業省であろうと思う。

 文科省については、既述の通り、いまや存在していること自体、有害であるからだ(第10章)。この省庁が国民に教えてきたのは世界に通用し得ない生き方であり、国力を低下させるばかりの教育だったからだ。

 国土交通省経済産業省については、もはやそれらの省庁の時代的役割は明らかに終わった、と考えられるからだ。

むしろこれからは、両省は、存続していたなら、そのこと自体、日本が持続可能な国家となる上で足かせになると同時に、地球人類にとっても有害となるだろうと推測されるからだ。

 実際、国土交通省については、風光明媚で山紫水明の国と海外からも高く評価されてきたこの国の国土の自然を見る影もなくさせてしまったのは、間違いなく先の建設省であり、その看板を掛け替えただけの今の国土交通省なのだからだ。それにもう道路という道路は、この狭い国土において、造られすぎるほど造られてきた。なぜこんなに立派な、と言うより立派すぎる道路がこんな山奥にまで必要なのかと思われるほどに、大規模「公共事業」という名の下に、造られ続けてきたのだ。

 したがって、もはやそんな国土交通省がもう少しでも存続すればするほど、この日本という国の国土の自然は取り返しの利かないほどに壊され、同時に財政をも、今でさえ、天文学的な借金を抱えていて健全化はよほど思い切った策を取らない限り困難とされているところへ、だめ押ししてしまうことは明らかだからだ。

 経済産業省についても事情はほぼ同様だ。

もはや「経済」という概念もこれまでの「資本主義」に依拠するものとは思い切って転換しなくてはならないことは既述の通りだ(第11章)。これまでのような、「便利さ」や「快適さ」を満たすだけの経済、物質的「豊かさ」を満たすだけの経済であっては、人間個々人を一面化させ、物事の全体的な視野を失わせ、孤立化させ、そして浅薄化させるだけでしかない。その挙句は、これまであらゆる生命を生かしてきてくれた地球の自然が持っているメカニズムを回復不能なまでに壊してしまい、500万年にわたって命をつなげてきた人類を終焉させてしまうことになるのは、論理的にも、また実際の兆候からしても、もはや明らかだからだ。

 また従来の経済を支えてきた資源についても、化石資源やウラン資源に依拠する経済では、温暖化も生物多様性の消滅も止められないことは明らかだからだ。

 

 では、今後は「小さい政府」にとって最も必要な省庁とは何であろう。

それはやはり《生命の原理》と《新・人類普遍の原理》と《エントロピー発生の原理》の原理を実現する省庁であろうし、それが最優先されることであろう。

ではそのためには、どのような省庁からなる政府となるのが適切であるか。

 私は、国づくりは「人づくり」から、という意味で、まずは「新しい市民」であり「新しい国際人」でもある「新しい人間」(6.1節)を育てる省庁としての「人間を育てる省」(仮称)ではないか、と思う。

 次には、その内容面でも実行力の面でも、これまでの環境省の規模をはるかに充実させた「国土再建維持省」(仮称)ではないか。

これは、これまで、国土交通省によって傷めつけられ破壊されてきたこの国の国土と生態系を再生あるいは蘇生させ、内外からの攪乱に対して耐性のある、真に強靭な国土へと再建することを主たる役割とする省である。

 またこれまでの経済産業省に代わって、新たに大々的に設けるべきではないかと私には思われるのは、「地方再生支援省」ともいうべき省庁であろう。

 なお、これまでの厚生労働省は、中身を一新して、国民の保健・医療・介護の全体を管轄する「国民福祉推進省」(仮称)へと拡充するのである。

 また、現行の総務省は、政府そのものを小さい政府とすることからも連動させて、規模を大胆に縮小して、もっぱら地方を総合的に支える支援省としての「地方再生支援省」にするのである。

 

 もちろんこうした諸々の変革に対しても、官僚や役人は、自分たちがこれまで築き上げてきた既得権を一気に失うことになるため、組織を挙げて抵抗して来てくるであろう。

でもそのときには、現行憲法第15条第1項に基づき、あるいは新憲法でもそれと同様の内容を存続させることで、既往の公務員法に優越させて————それは、後に出来た法が優越するという法理論に基づけば、既存法はそのままにしておいても構わないのである————、国民の固有の権利として、担当閣僚の判断のみで罷免できる法律をも、官僚の手を一切経ずして、国会議員たち自らの手で作った法律として、最高権である国会で予め成立させておけばいいのである。

 新選挙制度が実施されて、本物の政治家たちが続々と誕生してくれば、彼らはこれまでの政治家のように官僚に依存しては官僚にコントロールされる政治家ではなくなるのであろうから、それは何なく可能となると、私には想われるのである。

 

14.6 国民会議が中心となって三種の指導原理に依拠する新憲法草案の

作成

 実は、この表題の件は、後続の章にて詳しく扱うので、ここでは、新憲法に盛り込むべきと私には考えられる内容のうち、これまでの日本国憲法にはなかったものについてのみ、その概要を記述するに止める。

そしてその内容は、そもそも憲法とは何か、そしてそれは何のために、誰のためにあるものか、ということを明らかにすることによって、現行日本国憲法が欠いていること、もっと明確にすべきこと等がはっきりしてくるのである。

その場合、これからの憲法は「環境時代」のためのものであり、ポスト近代、ポスト資本主義の時代にふさわしいものでなくてはならない、ということをも合わせて考慮してゆく。

いずれにしても、憲法とは、少なくとも、安倍晋三が言うような、「憲法は国の理想を語るもの」でも、「国の理想の姿を描くもの」 でも断じてない。そのように理解する安倍晋三は、憲法とは何かを本当は知らないということだ。知らないで一国の首相をやったのだ。自分の頭の中で勝手に描いていただけなのだ。

実際、彼は憲法というものをこの程度にしか理解していないから、彼の内閣では、彼の考える「国の理想」に向けて、憲法が定める憲法改定手続きを平気で無視しては9条の解釈改憲を数に力を持って強行したし、「閣議決定」という国権の最高機関である国会を無視した独裁を繰り返しては専横を繰り返してきたのだ、と私は断定するのである。

 なお、憲法とは何かを含めて、環境時代の憲法とはいかなるものであるべきかについては、詳しくは、第16章を参照していただきたい。

 

 ともかく、私たち国民が私たちの憲法を自分たちで創って持つということは、自分たちが自分たちの意思に拠り国家共同体を結び、「自分たちで自分たちの進み行くその道を決意し、自分たちの国を自分たちで形づくることを決意する内容を明文化すること」(樋口陽一なのである。

 

 では、この憲法学者である樋口氏の言葉の意味内容を受け止めて、環境時代にふさわしい憲法として、現行日本国憲法に対して補われるべき事柄、あるいは曖昧さを払拭してより明確にされるべき事柄とは何か。

私の考えるそれは、次のものである。そしてそれらはいずれも、憲法の「前文」に書かれるべきものではなく、「本文」に明記されるべきものと、考えるのである。

ただし、「日本国の起源」のみは、前文に明記する。

 その起源に言及するのは、歴史上、「日本」という国号がいつ定まったのかを明確にすることによって、それ以前には日本も日本人も存在しなかったことをいまを生きる全ての日本国民が確認し、真の意味での「日本人の自己認識の出発点」(網野善彦「『日本』とは何か」講談社学術文庫p.21)を明確にするためである。

○国家理念(三種の指導原理)と国家目標

憲法の理念「立憲主義・民主主義・平和主義」

○人および市民の人間個人としての基本権

主権の保持者、生存権、人格・人身の自由権、信仰・良心・宗教活動の自由権、表現・出版・放送・芸術・学問の自由権、集会・結社の自由権、営業の自由権、性別・出自・人種・言語・故郷・門地・信仰・宗教的または政治的見解の違いに拠らない法律の前の平等権、私有財産の所有権・相続権・公用収用権、

成年、母性・児童・家族の保護、健康を維持する権利、社会保障を受ける権利、信書・郵便・電気通信の秘密の保護、労働権・争議権、裁判を受ける権利、弁護を受ける権利、不利益な供述を強要されない権利、身体の無瑕性の権利、環境権、国家による人権庇護権、無罪推定、一事不再理、請願権、出訴権の保障、国家賠償を受ける権利、公務員の罷免権、先住少数民族の権利、移民と難民の受け入れと地位(基本的人権の保障)、政治的亡命者の保護、基本権の喪失、権利の制限、

○国民の義務

すべての国民の憲法擁護の義務(国民の不断の権力監視義務と憲法を守る義務)。納税の義務。環境、とくに生態系と生物多様性の保護

○国家の使命

○元首

○共和制(判りにくい「象徴」天皇から天皇の国王化。君主制の一種である天皇制の変更)

○国旗と国歌

○国章

天皇の地位(天皇の権能の限界、天皇と大統領との関係、天皇の国事行為を含めた役割、天皇の財産の授受)

○立法・行政・司法の三権の独立分立

連邦議会

上院(参議院)と下院(衆議院)の二院制

下院(衆議院)と上院(参議院)の役割

議会の解散の有無と解散権

司法権

とくに行政権からの完全独立

憲法裁判所

○連邦および連邦構成主体としての州・地域連合体の立法権、行政権、司法権とそれぞれの独立性

○連邦構成主体とその法的地位および権限(連邦、州、地域連合体。連邦政府と州政府と地域連合体政府との間での権力関係。地方自治の保障

徴税者としての連邦・州・地域連合体の政府の義務。

○連邦の管轄事項

○連邦構成主体の管轄事項

○連邦と連邦構成主体の共同管轄事項

◯「法の支配」の遵守

○新国家建設構想立案国民会議の地位

普通選挙と一票の平等性の保障と選挙管理

○条約締結権限

○財政制度

○政治家の使命と責任

○公務員の使命と役割

○非常事態時、緊急事態時の国家の対応の仕方(個人と法人の権利の制限)

文民による軍人に対する統制権(シビリアン・コントロール)の二重三重の保障

○法人の基本権と独占の禁止

○首都

○通貨(全国通貨と地域通貨の共存)

 

14.7 これらを実行した上で、以下の諸変革を、新大統領(新政府)の下

で大至急断行

 それは、拙著の第2部で記述してきた新生日本国の新しい姿と形を実現するに当たって、その前に、足かせになると考えられるこの国の現状についてはあらかじめ無くしておかねばならないという意味で、これだけはどうしても実現させておかねばならないと思われることを実行しておく、という意味である。それも、我々日本国民については言うまでもなく、また国連からも、地球人類として生き残れるための対策の手を打てる時間はもうほとんど残されてはいないとも促されていることから、「大至急」である。

だから、その場合、大事なことは、優先順位を考えて着手してゆく、ということになるのである。

 なお、以下では、表記を簡単にするために、中央政府の官僚も地方政府の役人も共に「役人」と記す。

⑴ これまでの役人主導・役人独裁を消滅させて、真の民主主義を実現しておくこと

 すなわち、役人が政治を主導するのではなく、主権者である国民の代表としての政治家が、役人を公僕としてコントロールしながら、国民の要望が速やかに政治に反映させられる仕組みと制度を構築しておくのである。

言い換えれば、国民が真の主権者となりうるよう、すべての政治と行政のシステムを変革しておく。

 そのためには、例えば、政治家、特に政府の政治家(大統領・首相・閣僚・首長)が、官僚の操られるのではなく、国民の代表として、役人を常にコントロールする。そして、政治家が、必要に応じて、いつでも官僚に「説明責任」を果たさせる。

 政治家(大統領・首相・閣僚・首長)は役人に対して、常に「法の支配」を厳守させることは言うまでもないが、政治家自身も「法の支配」を厳守する。

 また、戦後ずっと、役人たちによって、当たり前のように続けられてきた「縦割り」という組織構成を完全撤廃する。閣僚は役人をコントロールできる本来の閣僚となり、首相は閣僚を指揮できる本来の首相となって大統領を支えて、政府を本来の一つの政府とする。

 なお、役人が「法の支配」を破った場合は、現行憲法では、第15条の第1項により、その官僚を直ちに罷免できる権限を担当閣僚に付託する法律を連邦議会で立法化しておく。

少子化と高齢化の進行による人口減少を抑える対策

 大統領は、国民に向かって、新生日本国建設に向けて船出するに当たって、国の目指す方向、目指す目的地を明確に説明することを通して、国民に希望を持たせると同時に、国民の義務と責任を明確にし、若者には結婚を、そして2人以上の出産を奨励する。また、政府としてもそれを支援することを約束する。

⑶ 学校教育の内容の根本的改正と教育システムの根本的再構成

 産業界にとって有用な労働力商品を生み出すことを目的とする既往の、断片的知識詰め込み型、個性無視した画一型、判断力養成無視型、表現力養成無視型の教育をただちに廃止して、生きる目的と意義を児童生徒に明確に理解させ、生きる力を身に付けさせる教育へと転換する。

 そのためには、これまでの文科省による管理教育行政を完全に廃止する。

と同時に、教師が本物の授業ができるように、教育カリキュラム構成を各教師に一任する。

 また、進学や進路について、児童生徒自身の選択肢を増やし、学校はそれを全面支援する。

 また、国民として、明確な歴史認識アイデンティティを持てるよう、正しい歴史の教育を徹底する。

 さらには、「生命主義」の理解にゆく前に、自由・平等・民主主義・権利・責任等々の概念を正しく理解できる教育を実施する。

東日本大震災のみならず、阪神・淡路大震災以降の大規模災害による犠牲者あるいは被災者の完全救済

 避難生活者を含めて、未だ立ち直れていない方々を完全救済する。

⑸1200兆円強に及ぶ政府債務残高の現在世代による清算の断行

 清算方法の基本的考え方としては、例えば、大企業の内部留保金を政府債務残高の返済に充てる。

そもそも、その内部留保金は、労働者を搾取したことにより可能となったお金であるゆえ、公民の「生命・自由・財産」を守るべき国家が窮地に陥っている時には、大企業はその社会的責任をこういう時にこそ果たすべきだからだ。

 それにこれからの環境時代は、既述したように、もはや「資本主義」では地球は持たないからである。

⑹ 来るべき大規模長期災害に備えて、強靭な国土の構築

①国土面積の67%を占める山林の管理と育成に拠って強化を図る。②大都市居住の危険を少しでも回避するために、地方の空家を有効活用しながら、人口の地方への移住を促進し、「都市と集落の三原則」(4.4節)を実現させてゆく。③その際、「地域連合体」(第8章)を形成して、食糧およびエネルギーの自給自足体制を築いてゆく。

⑺ 世代間相互扶助制度としての「年金」制度の抜本的改革

 「年金」制度だけを考えるのではなく、真の公共事業の実施によって、「新しい経済」(11.2節)のあり方と連動させながら、従来の年金制度と健康保険制度と介護保険制度との一体化を図る。

⑻ 日本の真の独立の達成と国民皆兵制度の設定と全方位外交宣言

 サンフランシスコ講和会議によって表向きは「独立国」となることは許されたものの、実態は、戦後ずっとアメリカの従属国とさせられてきた元凶である日米安全保障条約日米地位協定の破棄。そして今後は、「戦争は人命と地球の自然を最大に破壊する敵」として、いかなる特定の軍事ブロックにも属さずに、常に世界平和に尽力するユーラシア大陸の一国として、全方位外交を展開する旨を宣言する。