LIFE LOG(八ヶ岳南麓から風は吹く)

八ヶ岳南麓から風は吹く

大手ゼネコンの研究職を辞めてから23年、山梨県北杜市で農業を営む74歳の発信です/「本題:『持続可能な未来、こう築く』

14.7 これらを実行した上で、以下の諸変革を、新大統領(新政府)の下で大至急断行

14.7 これらを実行した上で、以下の諸変革を、新大統領(新政府)の下で大至急断行

 ここでは、拙著の第2部で記述してきた新しい姿と形を持った新生日本国の実現に向けて動き出す前に、足かせにならないように、これだけはどうしても実現させておかねばならないと思われることを大至急実行する。それは、既述してきたように、私たち日本国民については言うまでもなく、地球人類としても、生き残れるための対策の手を打てる時間はもうほとんど残されてはいないからである。

だから、ここでは、新国家建設の前にやっておかねばならない、あるいは解決させておかねばならない必須課題を、私なりに考える優先順位に従って記してみる。

 なお、以下では、表記を簡単にするために、中央政府の官僚も地方政府の役人も共に「役人」と記し、国会の政治家も地方議会の政治家も、区別なく、共に「政治家」あるいは「議員」と記す。

⑴ これまでの役人主導・官主主義・役人独裁を打破して、国民が名実ともに国の主人公であり主権者となる真の民主主義を実現しておくこと

 近代という時代になって、なぜ日本は、実質的に役人主導・官主主義・役人独裁の国になってしまったのか。それは、私は思うに、全て政治家の側に責任があり、第一に、近代西欧から移入したはずの民主主義議会政治の考え方を彼らはきちんと勉強せず、したがってそれをきちんと理解もせず、表面的な形だけを真似てきただけであるため。第二に、この国の政治家という政治家はいまだに明治期の最後の元老山縣有朋の遺産(K.V.ウオルフレン「日本という国をあなたのものにするために」角川書店 p.49)を打破し得ないで、むしろその中に埋没しているからである。その意味はこうだ。政党政治を忌み嫌い、政府というものは、天皇の権威を維持して行くためにのみ存在するものとし、持てる権力のすべてを使って、官僚を「天皇のシモベ」と位置づけ、その「天皇の官僚」の権力が、選挙で選ばれた国民の代表によって決して制限されない仕組みを築きあげては政党政治の発展を阻止してきた明治期の山縣有朋の遺産を、その後のこの国の政治家という政治家たちは、昭和になって「国民のシモベ」となったはずの官僚をコントロールもできずに、平成、令和になってもその山形の遺産を打破し得ずに、むしろ官僚に立法・予算・政策づくりを実質的に依存し続けていること。いや、そのために、彼らはむしろ役人に操られてさえいることである。第三は、また政治家にとってはその方が楽だからであろう。とにかく世界の民主主義国では当たり前にしている権力分散の原則である「三権分立」を破ってでも、政府側の者に「質問」して議会を立法機関ならぬ質問機関にしていれば、いかにも政治家然としていると国民をごまかせるし、それでいて歳費を含む議員報酬が手に入り、様々な特典や特権も手に入れられる。それに周囲から「先生、先生」とチヤホヤされて自己の権力欲・自己顕示欲・名誉欲を満たせるからだ。

 政治家たちのそうした状況の中で官僚たちは、これ幸いにと、政府を自分たちに都合のいいように組織割りしては、憲法を無視し、法律を恣意的に運用しては「法の支配」を日常的に破っている。それは到底「全体の奉仕者」「国民のシモベ」と言える姿ではない。なぜなら、彼らは常に自分たちが所属する組織である府省庁の既得権益の拡充と維持を国民の利益や福祉よりも優先している。それは専管範囲とする産業界に現役時代から何かと便宜を図っては、その見返りに、自分たちの先輩官僚たちが、そしてやがては自分たちも定年後には「天下り」して、第二の人生を優雅に送れる場所を産業界に確保してやることによって、組織内での自身の評価を高め、出世してゆこうとしているのである。

 ではこうした状況の中、これまでの役人主導・官主主義・役人独裁を打破して、国民が名実ともに国の主人公であり主権者となる真の民主主義をこの国に実現するにはどうしたらいいか。

 私は方法は二つあると思う。一つは、既述のような現行の体たらくそのものの「似非政治家」はすべて辞めてもらって、つまり国民の手で淘汰するとともに、国民が真の主権者となって現行の小選挙区比例代表並立制という選挙制度を根本から変えて、自らが信念とする政策案とその実現方法をも携えながら本来の政治家としての役割と使命を果たす決意と志を持つ「本物の政治家」を育てるという方法。もう一つは、役人が、真に「国民のシモベ」「全体の奉仕者」として主体的に働こうとする気持ちになるような客観的で公正な評価の仕組みを伴った公務員制度を構築するという方法。

 そしてこのうちの第一に関する選挙制度については、第9章にて、既存のものとは全く異なる私の考えるものを述べてきた。

では、第二の対処方法については、どう考えたらいいか。

それには、元通産省の官僚だった古賀茂明氏の考え方(同氏著「官僚の責任」PHP新書 P.149〜)を参考にさせてもらうならば、次のようにすればいいのではないかと私は思う。

————それぞれの役人が属している組織である中央政府では府省庁あるいは地方政府であれば部や課の利益のために悪知恵を働かせて行動したなら、報われないだけではなくむしろ降格されるか最悪罷免されてしまい、その反面、国民の利益や福祉のために働いて成果を挙げたなら、それが能力面と実績面で正当に評価され、待遇も良くなる仕組みを作ること。そしてその場合、評価者は同じ組織の上司ではなく、また情実評価を避けるために、政府の全組織に共通に、公正かつ公平に評価する部署を政府内に設け、そこで評価するようにする。

 なお、優秀な人材を思い切って抜擢して登用できるようにするには、上職者のポストが適宜空いているか空けておかねばならないが、そのためには、幹部も同様の公正な評価を受けるようにすると同時に、任期制にする。とにかく、中央省庁では、長くその組織にしがみついていればいるほど得をするというこれまでの悪弊は何としても撤廃しなくてはならないのである。

 そして上記のような目的を実現するためには、その効果をより確実なものとするためとして、次の改革をも一緒に進める。

①公務員試験そのものの変革(後述) ②これまでの身分保障の廃止 ③信賞必罰による実力主義の採用 ④役職定年制の導入と年功序列制度の廃止 ⑤次官を含む幹部級ポストの廃止 ⑥同時に、事務次官会議の廃止 ⑦キャリア制度の廃止 ⑧「天下り」、「渡り」の完全撤廃 ⑨民間と官界との間での人事交流を通して役人は民間のコスト意識の高さと仕事遂行の迅速さを学ぶ ⑩最後まで責任意識を持たせると同時に能力を高めるために担当事業や担当職務が完了するまでの役人の異動禁止 ⑪各府省庁の大臣の配下の官僚への仕事の指示の仕方における期限の明示とそれを厳守させることの徹底

 なお、これまで自民党政権時に限らず、民主党政権時でもそうだったが、そこで行われた

行政改革でもそうだったが、そうした改革時には決まって官僚たちは「変化」を嫌って、組織を挙げてサボタージュしたり、抵抗勢力となってきた。実際、民主党政権時、特に初代首相となった鳩山由紀夫氏が退陣しなくてはならなくなったのは、正にそれが主たる原因だった。

 これからは、そんな時には、担当大臣となった者は、これまでは事実上死文でしかなかった現行日本国憲法第15条の第1項「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」を、国民の代表として生かし、それをそんな国賊とも言える官僚集団に躊躇することなく適用して、毅然と民主主義政治を押し通さなくてはならないのである。

 なお、前述①の公務員試験そのものの変革とは、大学受験と同種の単なる知識を尋ねるような現行の試験から次のようなものへと根本的に変えることをいう。

それは、次の事柄を徹底的に理解させることを主眼とするのである。

民主政治の歴史、民主主義、権利とは、権力とは、統治とは、「法の支配」と「法治主義」、「三権分立」の根拠、「公務員とは」、公務員と主権者との関係、公務員と政治家との関係。

 そしてこうした公務員試験の問題は、現在はどこの政府も、実質的にほとんどそれを専門とする業者に任せているが、それでは形ばかりのものとなってしまうので、これからは憲法学者あるいは法学者と一般市民でもある人権活動家の代表者が共同して作成に当たるのが適切ではないかと私は考える。そしてこうした公務員試験制度を国会が議決して公式の法律とするのである。

 

少子化による人口減少を抑える対策

そのためには、要は、国民、特に若者に、将来への希望を持たせられる政策を打ち出すこと。

 大統領は、国民に向かって、新生日本国建設に向けて船出するに当たって、国の目指す方向、目指す目的地を明確に説明することを通して、国民に希望を持たせると同時に、国民の義務と責任を明確にし、若者には結婚を奨励すると同時に、子供を産んでも安心して育てられる保障を政府として明確にすること。

⑶ 学校教育の内容の根本的改正と教育システムの根本的再構成

 産業界にとって有用な労働力商品を生み出すことを目的とする既往の、断片的知識詰め込み型、個性無視した画一型、判断力養成無視型、表現力養成無視型の教育をただちに廃止して、一人一人の個性と固有の能力を積極的に認め、その中で生きる目的と意義を児童生徒に明確に理解させ、生きる力を身に付けさせる教育へと転換する。

 そのためには、これまでの文科省による管理教育行政を完全に廃止する。

と同時に、教師が本物の授業ができるように、教育カリキュラム構成を各教師に一任する。

 また、進学や進路について、児童生徒自身の選択肢を増やし、学校はそれを全面支援する。

 また、国民として、明確な歴史認識アイデンティティを持てるよう、正しい歴史の教育を徹底する。

 さらには、「生命主義」の理解にゆく前に、自由・平等・民主主義・権利・責任等々の概念を正しく理解できる教育を実施する。

東日本大震災のみならず、阪神・淡路大震災以降の大規模災害による犠牲者あるいは被災者の完全救済

 避難生活者を含めて、未だ立ち直れていない方々を完全救済する。

⑸1200兆円強に及ぶ政府債務残高の現在世代による清算の断行

 清算方法の基本的考え方としては、例えば、大企業の内部留保金を国の前途のために供出することを義務付け、政府債務残高の返済に充てる。

そもそも、その内部留保金は、労働者を搾取したことにより可能となったお金であるゆえ、公民の「生命・自由・財産」を守るべき国家が窮地に陥っている時には、大企業はその社会的責任をこういう時にこそ果たすべきだからだ。

 それにこれからの環境時代は、既述したように、もはや「資本主義」では地球は持たず、ポスト資本主義を目指さねば、企業も生き残れないことを、政府が勇気を持って説明する必要があるのである。

⑹ 来るべき大規模長期災害に備えて、強靭な国土の構築

①国土面積の67%を占める山林の管理と育成に拠って強化を図る。②大都市居住の危険を少しでも回避するために、地方の空家を有効活用しながら、人口の地方への移住を促進し、「都市と集落の三原則」(4.4節)を実現させてゆく。③その際、「地域連合体」(第8章)を形成して、食糧およびエネルギーの自給自足体制を築いてゆく。

⑺ 世代間相互扶助制度としての「年金」制度の抜本的改革

 「年金」制度だけを考えるのではなく、真の公共事業の実施によって、「新しい経済」(11.2節)のあり方と連動させながら、従来の年金制度と健康保険制度と介護保険制度との一体化を図る。

⑻ 日本の真の独立の達成と国民皆兵制度の設定と全方位外交宣言

 サンフランシスコ講和会議によって表向きは「独立国」となることは許されたものの、実態は、戦後ずっとアメリカの従属国とさせられてきた元凶である日米安全保障条約日米地位協定の破棄。そして今後は、「戦争は人命と地球の自然を最大かつ最速に破壊する敵」として、いかなる特定の軍事ブロックにも属さずに、常に世界平和に尽力するユーラシア大陸の一国として、各国の歴史と文化と宗教を尊重した全方位外交を展開する旨を宣言する。

14.6 国民会議が中心となって三種の指導原理に依拠する新憲法草案の作成

14.6 国民会議が中心となって三種の指導原理に依拠する新憲法草案の作成

 実は、この表題の件は、後続の章(第16章)にて詳しく扱うので、ここでは、新憲法に盛り込むべきではないかと私には考えられる内容のうち、これまでの日本国憲法にはなかったものについてのみ、その概要を記述するに止める。

それは、昨今、特に自民党政権を中心に憲法改定論議が盛んであるが、その場合の議論の的になっていることは例えば、国の安全保障に関わる第9条であったり、国民の家庭のあり方であったり子育ての仕方であったりと、極めて一部分に偏ったものであるだけではなく、本来憲法には馴染まないことであったりするが、私から見れば、本来の憲法とはどういうものかという観点に立ったならば(第16章)、どうしてもこうしたことも憲法の中に明記されなくてはならないのではないかと思われるものが欠落していると思われるからである。

 その場合、これからの憲法は「環境時代」すなわちポスト近代、ポスト資本主義の時代にふさわしいものでなくてはならない、ということをも合わせて考慮している。

いずれにしても、憲法とは、少なくとも、安倍晋三が語っていたような、「憲法は国の理想を語るもの」でもなければ、「国の理想の姿を描くもの」 でも断じてない。そのように理解する安倍晋三は、憲法とは何かを本当は知らないということだ。知らないで一国の首相をやったのだ。自分の頭の中で勝手に描いていただけなのだ。

実際、彼は憲法というものをこの程度にしか理解していないから、彼の内閣では、彼の考える「国の理想」に向けて、憲法が定める憲法改定手続きを平気で無視しては9条の解釈改憲を数に力を持って強行したし、国権の最高機関である国会を無視した上での「閣議決定」という独裁を繰り返しては専横を繰り返してきたのだ、と私は断定するのである。 

 ともかく、私たち国民が私たちの憲法を自分たちで創って持つということは、自分たちが自分たちの意思に拠り国家共同体を結び、「自分たちで自分たちの進み行くその道を決意し、自分たちの国を自分たちで形づくることを決意する内容を明文化すること」(樋口陽一なのである。

 

 では、この憲法学者である樋口氏の言葉の意味内容を受け止めて、環境時代にふさわしい憲法として、現行日本国憲法に対して補われるべき事柄、あるいは曖昧さを払拭してより明確にされるべき事柄とは何か。

私の考えるそれは、次のものである。そしてそれらはいずれも、憲法の「前文」に書かれるべきものではなく、「本文」に明記されるべきものと考える。

ただし、「日本国の起源」のみは、前文に明記する。

 その起源に言及するのは、歴史上、「日本」という国号がいつ定まったのかを明確にすることによって、日本も日本人もそれ以前には存在しなかったことを今を生きる全ての日本国民が確認し、真の意味での「日本人の自己認識の出発点」(網野善彦「『日本』とは何か」講談社学術文庫p.21)を明確にするためである。

○国家理念(三種の指導原理)と国家目標

憲法の理念「立憲主義・民主主義・平和主義」

○人および市民の人間個人としての基本権

主権の保持者、生存権、人格・人身の自由権、信仰・良心・宗教活動の自由権、表現・出版・放送・芸術・学問の自由権、集会・結社の自由権、営業の自由権、性別・出自・人種・言語・故郷・門地・信仰・宗教的または政治的見解の違いに拠らない法律の前の平等権、私有財産の所有権・相続権・公用収用権、

成年、母性・児童・家族の保護、健康を維持する権利、社会保障を受ける権利、信書・郵便・電気通信の秘密の保護、労働権・争議権、裁判を受ける権利、弁護を受ける権利、不利益な供述を強要されない権利、身体の無瑕性の権利、環境権、国家による人権庇護権、無罪推定、一事不再理、請願権、出訴権の保障、国家賠償を受ける権利、公務員の罷免権、先住少数民族の権利、移民と難民の受け入れと地位(基本的人権の保障)、政治的亡命者の保護、基本権の喪失、権利の制限、

○国民の義務

すべての国民の憲法擁護の義務(国民の不断の権力監視義務と憲法を守る義務)。納税の義務。環境、とくに生態系と生物多様性の保護

○国家の使命

○元首

○共和制(判りにくい「象徴」天皇から天皇の国王化。君主制の一種である天皇制の変更)

○国旗と国歌

○国章

天皇の地位(天皇の権能の限界、天皇と大統領との関係、天皇の国事行為を含めた役割、天皇の財産の授受)

○立法・行政・司法の三権の独立分立

連邦議会

上院(参議院)と下院(衆議院)の二院制

下院(衆議院)と上院(参議院)の役割

議会の解散の有無と解散権

司法権

とくに行政権からの完全独立

憲法裁判所

○連邦および連邦構成主体としての州・地域連合体の立法権、行政権、司法権とそれぞれの独立性

○連邦構成主体とその法的地位および権限(連邦、州、地域連合体。連邦政府と州政府と地域連合体政府との間での権力関係。地方自治の保障

徴税者としての連邦・州・地域連合体の政府の義務。

○連邦の管轄事項

○連邦構成主体の管轄事項

○連邦と連邦構成主体の共同管轄事項

◯「法の支配」の遵守

○新国家建設構想立案国民会議の地位

普通選挙と一票の平等性の保障と選挙管理

○条約締結権限

○財政制度

○政治家の使命と責任

○公務員の使命と役割

○非常事態時、緊急事態時の国家の対応の仕方(個人と法人の権利の制限)

文民による軍人に対する統制権(シビリアン・コントロール)の二重三重の保障

○法人の基本権と独占の禁止

○首都

○通貨(全国通貨と地域通貨の共存)

17.3 新国家建設構想について国民の声を聞く

17.3 新国家建設構想について国民の声を聞く

 出来上がった新国家建設構想は次の手順と方法によって国民に説明して、それに対する国民の声を聞き、それを受け止めて生かし、周知徹底を図り、国民全体の協力を要請する。

⑴ 国会(連邦議会)にて説明と国会承認

 先ずは出来上がった新国家建設構想を国会にて説明する。代表して説明するのは国民会議議長である。

ただし、その場合、国民会議新国家建設構想を立案することを使命とする国民各層の代表から成る機関であり、その意味では国会と同等の権力と権威を有する機関であり、独立機関であるゆえ、説明されたそれらを国会内で改めて審議することはなく、説明を受けた国会は、その国会にて、国民会議による新国家の建設構想の立案に着手する際の基本的な考え方と方法(17.2節)を周知徹底の上で承認の議決し、最高の権威ある新国家創建プロジェクトと公式に位置付ける。

 

⑵ 公式となった新国家創建プロジェクトを内閣に受け渡す

 国民会議議長から説明されたその内容を、国会議員を代表して下院議長が、執行機関である大統領府の中枢である内閣の首相にも直ちに知らせる。内閣に国民会議が決めたことをその通りに、滞ることなく執行してもらうためである。

つまり、こうして国民会議と国会と内閣は、国家的事業に向けて共同体制を組むのである。

 

⑶ 首相から国民への新国家創建プロジェクトの発表と説明

 首相が国民に向け、公式の国家創建国家的大事業と位置付けられた新国家創建プロジェクトの内容を平易な言葉をもって、簡潔に、しかし論理的に説明する。

 

⑷ 新国家創建プロジェクトの内容に対する国民一般から意見・質問の受付

 首相の説明に対する国民一般からの質問や意見を寄せてもらうための真の意味での————すなわち、これまでの役人主導になる、いかにも民主主義的な手順を踏みましたと言わんばかりの、形ばかりの「パブリック・コメント」というものではない————公聴会を全国各地で開催する。その結果は直ちに、すなわちその意見や質問には一切手を加えずに、国民会議にて検討してもらい、それを生かしながら国民会議としての回答を出してもらう。

出されたその回答については、政府がそれを透明性をもって国民に公正に発表し、それに対する国民の質問や意見を再度寄せてもらう。

 政府と国民とのこのやり取りを幾度か繰り返し、新国家建設構想をより国民の納得ゆくもの、国民の協力をより得られる内容のものへと高めてゆく。

 そして質問や意見がほぼなくなった時点を見計らって、最終的な新国家創建プロジェクトとして決定する。

17.2 「新国家建設構想立案国民会議」の設立による新国家建設構想の立案と国家創建着手に向けた基本方針(考え方・方法・手順)の明確化

 

17.2 「新国家建設構想立案国民会議」の設立による新国家建設構想の立案と国家創建着手に向けた基本方針(考え方・方法・手順)の明確化 

 新生日本国の建設に着手するにあたり、先ず大統領は、全国民に向けて、「新国家建設構想立案国民会議」(以下、国民会議 9.1節を参照)を早急に立ち上げると発表する。また、同時に、その国民会議を法的にも保障すると補足する。

その国民会議とは、文字どおり、国民の全階層の代表からなる、その新国家の構想を練るための主体となるものである。

 そこで、本節では、この国民会議の設立の手順と、その国民会議の法的裏づけ、そしてそれが設立された後、その国民会議によって新国家の建設構想を立案する際の基本的な考え方と方法とをあらかじめ明確にしておく。

 

国民会議設立の手順と国民会議の法的位置付け

 この会議の構成員は、新選挙制度(第9章)によって誕生した本物の国会議員からなる新中央政府連邦政府)の下で設けられた国民会議設立のための超党派委員会(以下、超党派委員会)によって集められる。

 ただし、その場合、超党派委員会によって何が進められるにしても、その際特に重要なことがある。それは、進めるべき作業の全てを政治家たちで互いに分担し、各自の秘書の手助けの下に直接行い、そこには官僚は一切関わらせないことである。なぜならば、そうした場面で官僚を介在させると、彼らは、過去からの組織の記憶の中で培って来た習性として、自分たちが所属する組織の利益確保や既得権益の拡大と維持を最優先して狡猾に動くからである。したがって、官僚の力を少しでも利用しようという場合には、必ず政治家が、事前に、自分には憲法第15条第1項と2項による主権者の代表としての公務員への罷免権や考課権を含む人事権があることを明示した上で、具体的な指示を彼らにし、しっかりとコントロールしなければならないのである。そして、政治家が官僚を含む役人一般を常にコントロールするというのは、国民の代表としての当然の義務なのである。これまでがそうであったように、政治家がその義務を果たさなかったなら、またしても、この国を国民が主人公(主権者)としての民主主義の国ではなく、官僚が実質的な主権であるかのような官主主義による官僚独裁の国にさせてしまうからである。

 私のこうした主張を裏付ける一つの実例を、2022年11月の終わりころ、日本国民の間で大問題となった政治的問題から拾う。

それというのは、その時の岸田文雄内閣が、これまでのこの国の基本政策としての「専守防衛策」と、「今後は原発の新規建設はしない」との政策の両者を大転換した経緯そのものに、政治家————この場合には各省庁の大臣である閣僚であるが————がその義務を果たさなかったなら結果はどうなるかということが如実に現れているからである。

 私は先に、この国の中央政府閣議というものがどういう経緯で開かれ、そこには何が議案として提出され、それがどのように決定されるかという実態について述べて来た(2.5節)。

ここでも、そこで述べたと同じような仕方で進められたということが、はっきりと見て取れるのである。それは、官僚という公僕ないしは「国民のシモベ」には本来決して与えられてはいない、他者を支配して動かすという意味での権力を、官僚たちは自分たちの権益獲得のために、闇で、しかも恣意的に行使しては、予め自分たちと族議員たちとの間だけで決めた目的を果たすという、文字通り、狡猾そのものと言っていい手口だ。

 その時の閣議決定に至るまでの経緯については、某民放局がわかりやすい図表にしてまとめてくれたものがあるので、それを掲載させていただく。以下に掲載する写真は筆者がその時のTV画面を撮影したものである。

 この写真が示している図表の中の、官僚が設けたと思われる各種の会議あるいは小委員会と称する会議体の委員構成の仕方と会議体での会議の実際の進め方、そして各委員への発言のさせ方には特に注目していただきたいのである。

BS-TBS「報道1930 ▼岸田総理に直撃“日本の大転換”決断の瞬間▼安倍氏不在の舞台裏は」より 2022/12/27

 具体的には、上記図表中の上段の、「反撃能力の保有は不可欠」と「幅広い税目による公民全体での負担」という結論を決めた「有識者会議」なるものの構成員の実際と、その全4回にわたる会議数と、各委員への発言のさせ方についてである。

とは言ってもこの図表では「有識者会議」の実際の構成員が誰なのかは不明だが、この会議を設立したのはほぼ間違いなく防衛省財務省の官僚であろうから、その場合の会議の構成員については、防衛省財務省の官僚にとって好都合と思われる者————それは、彼らが予め族議員との間で定めた狙いとしての結論を引き出す上で好都合な意見を述べてくれる者で、この場合には彼らの所管する産業界、例えば兵器メーカー各社や増税を支持する専門家ら————から、恣意的に選任しているものと思われる。

 

 また、上記図表中の下段の、「原発の新増設」と「60年超も運用を可能に」なる結論を決めた「経産省 原子力小委員会」とそれを支持した「政府GX実行会議」なるものの構成員の実際と、その会議開催数と、各委員に対する発言のさせ方についてである。これらの過程はほぼ間違いなく経済産業省の官僚によって行われたものと推測される。

 実際、12回開催された「経産省 原子力小委員会」の委員構成は、「21人中 脱原発派は2人」、つまり残る19人は原発推進賛成派となっていたし、続いて5回開催されたとする「政府GX実行会議」については、委員構成13人中、原発容認発言者が9人で、原発慎重発言者が1人という構成になっている。しかも、原発容認発言者の中には、中部電力ENEOSそして三菱商事など、民間メンバーであり、かつ利害関係を有する者が含まれていたのである。

 

 なお、ここで明確にしておかねばならない、やはり重要なことがある。それは、防衛省財務省そして経済産業省に限らずどの省庁であっても、そこに所属する官僚たちが民間人を恣意的に選任して集めたり、また集めて設けた会議体を自分たちの思い通りに仕切ったりするなどということは、それ自体権力の行使にあたるのであって、本来、絶対に許されることではないということである。そのことも私たち国民は主権者として知っておかねばならない。

なぜならば、官僚たちはあくまでも公僕すなわち「国民のシモベ」であって、国民に奉仕する立場(憲法第15条)。その彼らには、「他人を押さえつけ、支配する力」(広辞苑)としての権力など与えられるはずはないし、実際私たち国民は主権者として、彼らにそんな力は与えてはいない。彼らは公務員試験に合格しただけの身分なのであって、私たちの政治的代表ではない。私たちがその権力を与えているのは、私たちが選挙で選んだ、私たちの代表である政治家だけなのだ。その場合の権力も、政治家が掲げた公約を法律なり政策なり、また予算なりの形にして実現するための、そのためだけの権力なのだ(ジョン・ロック「市民政府論」岩波文庫p.151)。

 なのに、彼ら官僚は、私たち国民の目を盗んで、彼らには与えられてはいない権力を闇で行使しているのである。

 ところが、この国の政治家という政治家は、これまで随所で述べてきたように、国民に成り代わって「国民のシモベ」をしっかりと監視し、またコントロールするという重大な使命をまったく果たしてはいない。むしろ、官僚や官僚組織に対しては実質的に野放し状態だ。それをいいことにして官僚たちは、彼らには付託されてはいない権力を闇で行使しては、国民の利益はそっちのけにして、彼らだけの利益を実現しているのである。その利益とは、例えば、自分たちに好都合な法律を既述のような手口で成立させては、自分たちの業界への専管範囲を拡大し、自分たちの組織内でのポストを増やし、また同じ組織内の先輩官僚たちの「天下り先」を確保し、そうすることによって自分はその所属組織内での評価を高め、出世し、また栄転できるように図る、というものだ。

 これから判るように、そこには国民のより良い幸福を実現するという考えは一切ない。

 

 つまりは、官僚たちが会議体を設立する時の手口はいつも決まって同じで、まことしやかに出来レース」をやって見せているのだ。だからそれぞれの会議体の進行のさせ方も、表向きは座長あるいは委員長を立てながらも、司会あるいは議事進行は自分たち官僚がその場を仕切り、自分たちが予め決めた結論に「お墨付き」を与える答申がなされるように、満座の委員を誘導するのだ。

 このことからわかるように、官僚たちが政府内に設ける会議体は、いかにもいろいろな方面から専門家を呼び、彼らの間で民主的な議論をしてもらい、その結果得られた結論であるかのように外に向かって発表するが、それは全くの嘘で、いずれの会議体も、関係官僚たちの目論見を隠すための手段としての隠れ蓑にすぎない。委員会のメンバーとして選ばれる方も官僚の意図を察して、あるいは了承して委員になる。したがって、当の官僚にしてみれば、委員構成が決まった瞬間、すでにその会議体としての最終結論は出たも同然なのだ。たとえ、その過程で、何回その会議体が開催されようとも、である。多分、担当官僚も、自ら望む委員構成ができた瞬間、内心ほくそ笑んでいることだろう。あとは答申を出してもらう時まで、自らがその会議体を仕切りながら、その会議がいかにも民主主義的に行われていたかのように装うだけなのだから。

 なお、こうした一連の政策の大転換という結論を閣議決定の後、この閣議決定の内容について国民の声を幅広く聞くという主旨の下に行われるかもしれない「パブリックコメント」についても、私たちが、山梨県北杜市で、国土交通省が実現を目論んでいる「中部横断自動車道(北部区間)」建設の賛否を問うという建前の下で行われたパブリックコメントの場合と手口は全く同じで、まことしやかな「出来レース」が行われることは間違いない。

 

 とにかく私たち国民は、あくまでも主権者として、官僚たちにこのような狡猾で卑劣な手口でもって、彼らに好都合な政策を決めさせてはならないのだ。新聞等のジャーナリズムも、官僚たちのこんな手口に騙されないよう、細部にわたって絶えず監視していなければならない。その時の監視の向けどころは、権力を行使する者は「法の支配」に拠って行使しているのか、という点だ。なぜかといえば、「法の支配」は、よく総理大臣や外務大臣が、特に国連や外国の首脳らとの外交の場で口にするように、自由と民主主義と同様に、「人類の普遍的価値」だからだ。

 したがって、このような会議体を官僚たちに作らせ、一見、まことしやかな手順を踏んで出された結論であるかのように官僚たちにふるまわせてしまうのは、配下の官僚たちの監督責任のある各省庁の大臣がその義務を果たしていないことの現れであって、その意味で、大臣すなわち閣僚こそその最大の責めを負わねばならないのであるし、またそんな閣僚を任命した総理大臣なのだ。

 

 以上の理由を踏まえながら、超党派委員会は、次の役割を果たすのである。

 

⑴ 国民会議委員の募集とその設立

全国から「新生国家建設のための構想づくりに愛国心と強い責任感のある人々」を募集し、その中から次の条件を確約できる人のみを、徹底した透明性を維持した中で、社会のすべての階層から満遍なく選任する。

 なお、超党派委員会は、男女の多様な意見を取り込むために、国家を構成する個々のシステムあるいは制度の設計に参加する国民会議の委員として選任する数は男女同数とする。

ただし、その委員の選任に際しては、現行の社会システムにおいてすでに利害関係を有する者は除外する。

①公平中立の立場で、基本理念を羅針盤として、国家の社会システムや制度の設計に貢献する。

②会議の途中経過について外部に公表できるのは国民会議議長のみとし、各委員は決して口外しないこと。それは、いたずらに国民の間に混乱を生じさせないためである。もし、口外したことが明らかになった場合には、それまでのその委員に国家から支払われた報酬はすべて没収されること。

③招集の連絡があった際には、毎回参加し、討論に加わること。

④また、国家の社会システムや制度を設計してゆく際、既存の現行法との関わりには一切こだわらずに、総合的に見て最良と思われる案を忌憚なく提案できる。なぜなら、国を生命主義の国家とするには既存の法体系は何れにしても全面的に書き換えねばならないことだし、また、後に成立した法律が既存の法律に優先されるからである。

⑵ 国民会議議長の選任

 超党派委員会は、集まった国民会議委員の中から、「互選」という形式で、国民会議を代表する議長を選任する。

⑶ 各分野の専門家の選任

 国民会議の委員が国家の個々のシステムあるいは制度の設計のために議論する際、専門的立場から助言や情報を的確に与えられる専門家をも、全国から、徹底した透明性を持って、公正に選任する。

⑷ 国民会議の法的位置付け

 国民会議は現行の国のあり方や諸制度を超えた新国家を建設する上での構想を立案することのみを使命とする国民各層の代表から成る機関であるゆえに、超党派委員会は、国民会議に対して、新国家建設構想に関するその権威は立法機関としての国会の権威と同等であり、同時に、その権力は他のあらゆる国家権力機関から完全に独立しているものとして、立法をもって位置付ける。

ただしその国民会議は、国内の政策、法律、予算を議論して議決することを主たる使命とする国会とは立場を明確に異にする。

 

Ⅱ 国民会議による新国家の建設構想の立案に着手する際の基本的な考え方と方法

⑴ 新国家建設構想の基本的な理念と新国家の「目的」と「理念」と「形」の確認と最終検討

国民会議の各委員が選任されて国民会議が設立されたなら、国民会議議長(以下、議長)の下で、委員全員で、先ずは新国家を構想する際の基本的な理念であり羅針盤と、その新国家が目指すべき「目的」と「理念」と「形」を確認し、同時に、それらの妥当性についての最終的な再検討を行う。

 その場合の基本理念とは、三種の主導原理(4.2節)と都市および集落としての三種の原則(4.4節)そして、人間にとっての基本的諸価値が持つ階層性(4.3節)である。

また、目指すべき新国家の「目的」と「理念」と「形」は第8章にて明らかにしてきたものである。

⑵ 新国家の建設構想の立案に際しての基本的な考え方と方法

 それは、一言で言えば、基本理念の連続性と一貫性の確保ということである。

具体的には、国家を構成する個々のシステムあるいは制度は互いに内的あるいは質的に連続性を持っていて、なおかつ、それらの個々のシステムや制度は、どれも、先の基本的な理念が持つ考え方や精神に貫かれていることである。

 この国は、明治期以来今日まで、国を構成するすべてのシステムや制度は、一つの理念のもとに連続性を持ち、一貫性を持つというようには作られてはおらずに、どちらかといえば、常に目先を見ただけの、あるいはよその国がとっているものをいいとこ取りしたモノマネでしかなかった。だからそこには、相互のシステムや制度の間には内的あるいは質的に連続性はなかった。いってみれば継ぎ接ぎだらけであり、すべてがゴチャゴチャだった。

 しかしそうなったのは必然でもあった。そうしたシステムや制度の基本を作ってきたのは、この国では、本来その役割を持つ国会ではなく中央行政府、それも明治期の官僚たちだったし、その国会も、中央政府も、当時の列強に侮られないようにと、形の上で、ただ追いつけ、追い越せとやってきただけで、本当の意味で民主主義や民主主義政治を実現する上では何を知り、何をシステムや制度として作らねばならないかということについては、民主主義政治の先達である欧米からは真摯には学んでは来なかったし、また、多分、全くと言っていいほど勉強もして来なかったからだ。そしてそうした状態を、この国のすべての政治家たちは、その後、官僚に依存していたいがために、今日までずっと放置してきたのだ。

 だが新国家においては、国土全体を、また社会全体を、法体系全体を、一つの理念に貫かれた連続的全体を成すようにするのである。つまり、国を成り立たせるシステムの各要素である経済、政治、教育、福祉(保健・医療・看護・介護・子育て)、科学、技術、文化、金融、財政、等々の全ての分野が、その根底において、共通に、「三種の主導原理」と「都市および集落としての三種の原則」そして「人間にとっての基本的諸価値が持つ階層性」に寄って貫かれている、となるのである。

 したがって、その「都市および集落としての三種の原則」により、それを実現するためにも、現状の47都道府県と1718の市町村の行政区画を解体し、地域連合体とに再編成することも国民会議の役割に含める。

 なおこれらの理念を実現する上で、専門的立場から国民会議各委員に助言する専門家も、各々は専門分野を持ちながらも、しかしそこに埋没したりそこだけに執着したりするのではなく、常に周囲との間で連続的一貫性を保つようにしながら、そして目指すべき国家の全体像を見失わないように留意しながら、助言するのである。

国民会議各委員の構想づくりにおける担当部署の決定

 国民会議を構成する各委員は、新国家の構想作りに着手するに当たって、自分の担当したい分野を自己申告し、議長はそれをできる限り尊重するようにして、各担当分野を決める。

決まった後、いよいよ具体的なシステムや制度の設計の作業に取り掛かる。

⑷ 構想立案期間

国民会議が新国家の構想立案に与えられる期間は二年間とする。

悠長に構えていられる時間はもはやこの国にはないし、人類にとってもないからだ。

17.1 本物の国家、持続可能な国家の建設に着手する旨の国民への説明

17.1 本物の国家、持続可能な国家の建設に着手する旨の国民への説明

 その場合に何と言っても先ず必要なことは、新選挙制度によって国の中央および地方に誕生して来た本物の政治家たちが、中央で、また地方で、国民ないしは住民のすべてに向けて、これからこの日本という国は、どういう根拠に基づいて、どういう国づくりを、どのような行程に沿って目指すのかということを、国民の誰もがわかる平易な言葉で、論理的かつ具体的に説明することだろう。

そしてそれに対する国民からの質問や意見を時間をかけてあますところなく聞き取り、それに対して、決してごまかしたり曖昧にしたりせずに、政治家たちも一緒に考え、正直に、かつ誠実に回答することであろう。

 そしてその上で、この前代未聞、日本国の命運をかけた、そして世界人類の存続に間違いなく貢献できるであろう、文字通り国家的大事業、人類史的大事業への国民の全面協力を呼びかけることである。

 振り返れば、私たちの先人は、かつて、幕末から明治維新への移行の時と、アジア・太平洋戦争敗戦前後でも大変革に遭遇している。

しかし、この二つの変革を行うにあたって共通していたことは、そこには国民一般の意思は一切汲まれてはいなかったことだ。つまり、国民の知らぬ間に、国民の代表である政治家ではなく明治維新の流れを汲む官僚たちが、いつの間にか「富国強兵」「殖産興業」を「国策」としてしまったし、戦後は、同じく国民の知らぬ間に、あるいは了解のないままに、いつの間にか「果てしなき経済成長」を暗黙の国策として来てしまった。

 しかし、今度はそれらとは全く違う。国民は一人ひとりが、そうした前例を教訓としながら、自ら、歩み出そうとしていることの動機・主旨・目的を理解し合意した上で、主体的・能動的に、その文字どおり前代未聞の国家的・人類史的大事業に参加するのである。

 

 しかし、その場合、中央政府連邦政府)の首相————大統領によって任命される————は、次の諸事項をも、国民に予め明確に伝えておくことも忘れてはならない。それは政治家全員が、国民から選挙で選ばれた「国民の利益代表」としての覚悟を示すためでもある。

その1つは、このような試みは、既述のごとく、日本の歴史始まって以来初めての試みであると同時に、世界のどの国を見渡しても前代未聞の試みであること。それだけに世界は注目しているであろうこと。

 1つは、またそれだけに国民を挙げてのこの挑戦は、幾たびか大混乱や予期せぬ事態にも直面するだろうが、それは、今後、ほぼ間違いなく遭遇することになるであろう一層大規模で長期にわたる惨事に対して、我々日本国民に対応力を身に付けさせ、生き抜く力をも増し加えてくれるであろうこと。

 1つは、そしてその試みは、困難ではあっても、その先には、国民の皆が希望と展望と誇りを見出せるようになるであろう試みであること。つまり、それは、国民がこれまでの漠然とした将来不安から解放されて、新生日本国(日本連邦)を建国する生みの苦しみの時であり、私たちの愛する子や孫が永遠に存続できるようにするための、国民みんなで助け合って乗り越えて行かねばならない試煉でもある。だから、私たちはその大事業に敢然と立ち向かうのだ、と。

 1つは、それに私たちがその試みに挑戦してみせることは、これからのあり方を模索する世界の人々に大きな勇気と示唆を与えることにもなろう、と。

 1つは、それに、日本は過去、太古の時代からは中国と韓国・朝鮮を通じて、またとくに明治以降は欧米から計り知れない文化と文明の恩恵を受けて来たが、いま、私たちが世界のどこよりも先駆けてこの大事業に挑戦することは、これらの国々に対して、幾分かの恩返しになるのではないか、とも。

 1つは、この試みは、既存の法律があり、現行の諸制度が生きている中で、それらを逐一作り替えては前進しながら、最終的には、これまでとはまったく異なる体制と理念を持つ国家を建設しようというものである、と。

 1つは、そしてその大事業には私たち政治家が本物の知識人の助言を得ながら、覚悟をもって国民の先頭に立つと誓う、とも。それは言い換えれば、この大事業は、そのすべての過程において、国民の政治的代表である私たち政治家が公僕である役人をコントロールしながら、全責任を持って行おうとするものである。これまでのように、官僚に依存したり放任したりは決してしない、と。

 

 こう説明することにより、国民は、一人ひとり、これから自分たちの祖国日本はどう変わり、どういう国になるのかが眼に見えてくるようになるだろうし、またそのことにより、国民の老若男女、健常者も障害者も、富者も貧者も、それぞれの覚悟が決まり、生きる目標も定まるようになるだろう。

 そして、その時点をもって祖国変革の大事業はスタートするのである。

 ただし、もちろんここで言う国民への呼びかけは、自由で自主的な参画を促すもので、あの全面的無条件降伏という結果を招いて終わったアジア・太平洋戦争へとつながっていった日中戦争に際し、人的および物的資源を統制し運用する広範な権限を政府に与えた「国家総動員法」(1938年)とはまったく似て非なるものである。

第17章 新しい政治家による国家創建に向けた道筋と行程

第17章 新しい政治家による国家創建に向けた道筋と行程

 これまで私は、第1部では、世界の現状に対する私の認識と、人類が永続的に生きて行けるための条件としての原理と原則、そしてこれからの日本人に特に求められていると私には思えていたものの考え方や生き方を明確にしてきた。なお、ここで言う「人類が永続的に生きて行ける」との意味は、百年や千年の長さではない。人類のうち現生人類としてのホモ・サピエンスが東アフリカで進化したのは今からおよそ20万年前と言われるが(ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」河出書房新社p.9)、少なくとも、ほぼその長さに匹敵する時間的な長さを生きて行ける、との意味である。

 続く第2部では、第1部を土台にして、つまり、人類が永続的に生きて行けるための条件としての原理と原則を土台にして、今度はこの国が真に持続可能な国と国家となりうるための社会を成り立たせる基本的に重要な諸制度とはどういうものか、そしてそれらの内で最も重視しなくてはならないことは何かということについて、やはり私なりに述べてきた。

 なおここで言う真の国家とは、これまで幾度も述べて来たように、「社会の構成分子たるあらゆる個人または集団に対して合法的に最高な一個の強制的権威を持つことによって統合された社会」のことである。あるいは軍(自衛隊)を含めて、あらゆる公的機関・公的組織を合法的に最高な一個の強制的権威を持つことによって統合できる、「中枢」機能を持った統治体制を確立している国であることだ。当然そうなるためには、最低でも、現在、この国の全ての役所に共通に見られる「タテ割り」の組織構成が全政治家たちの手によって壊されていなくてはならない。そもそも、一国の政権を担う総理大臣や閣僚が政府の行政状況を国民に説明する際、決まって官僚の書いた作文を棒読みしなくては説明できないということは、国民から選挙で選ばれた国民の代表である政治家が、公僕、すなわち「国民の召使い」である官僚を使いこなすのではなく、逆に官僚たちに操られていることを意味しているのである。実際、同じ行政課題についても、各省庁の大臣によって言うことが異なるということが頻繁に生じるが、それも、自分たちが所属する府省庁の利益を国民の利益に常に優先させる官僚たちに操られているという事実を証明しているのである。こんなことでは、イザ国難という時には、初動体制に遅れが出るどころか、事実上の無政府状態に陥り、その結果、国民は中央政府からも地方政府からも救われる可能性はほとんど無くなるということだ。実際、そのことは既に近年の幾多の大惨事で証明されてもいる。

 この状態は現行憲法が明記している「主権在民」など全く空文化していることで、実質の主権者は官僚を含む役人だということになってしまうのである。したがって、こんな状態では、どんなに選挙によって政権が変わったとしても、その政権を操っているのが官僚たちである以上、そして官僚たちは選挙のたびに入れ替わる訳ではなく、組織の一員としてずっと存続している以上、国民に対する政治や行政の中身が変化するはずもないのである。実際、官僚たちの多くは、政権がどんなに変わろうとも、俺たちがこの国を運営している以上、既得権を手放すことは絶対になく、現状は何も変えさせない、という意識でいるのだ。それはすなわち、この国は主権在民の国ではなく主権在官の国のままとなるのだから、国の中には依然として民主主義はもちろん表現の自由も、そして「法の支配」も実現されるはずはない、ということを意味するのである。それだけではない、こんな状態では、この国が真に持続可能な国となるための三種の指導原理だって実現されるはずはない。なぜならば、それらの原理を国内に実現させるということは、それは、この国の明治期以来、中央政府の官僚たちによって作り上げられてきた公式の国策としての「殖産興業、「富国強兵」や、戦後の非公式の国策としての「果てしなき経済の成長」あるいは「果てしなき工業生産力の発展」を捨てさせることを意味するからであり、それはそのまま、各府省庁の官僚たちをして、その国策の中で巧妙に築きあげてきた専管産業界との持ちつ持たれつの関係の一つとしての「天下り」先を失うことになるだけではなく、天下りそのものが不可能となるし、また意味をなくすことをも意味するからである。

 こうして、これまでのことを振り返ってみれば一層はっきりするように、重要なことは、これまでのような轍を二度と踏まない国づくりを着実に進めてゆくためには、主権者意識を持ち、自身に忠実で、民主主義政治に覚醒した多くの国民が育つことと、真に愛国心と自国民に対する忠誠心に燃えた本物の政治家がより多く育つことなのである。今のような、政治家としての使命や役割すら知ろうともせず、というより、「政治とは何か」すら知ろうともせずに、自身の利益だけを考え、役人に依存しては政治家人生を歩もうとするだけの、自己に甘えきった税金泥棒としか言いようのない似非政治家では到底ダメで、そのような輩は存在するだけで税金の無駄遣いになるし、この国と国民の安全保障にとってはかえって有害無益でしかないということである。そのために私は、そのような似非政治家を必然的に生じさせてしまう現行の選挙制度小選挙区比例代表並立の制度)は根こそぎ廃止しなくてはダメだとして、このような制度にすれば国民の信託に応えられる本物の政治家を生み出し、また育てることもできるであろうと思われる全く新しい選挙制度をも提案してきた(第9章)。

 そして第3部では、以上のことを実現させるための具体的な方法と手順について述べている。

そこでも強調しておきたいことは、真に持続可能な国と国家を創建するには、国民にとっても、また政府にとっても、実際的にもまた究極的にも、「恣意性」つまり「気紛れ」を追放して、判断と行動の指針・規準あるいは原器ともなるべきものが不可欠であろうと思い、私の考える新憲法を提案してきたことである。現行日本国憲法は、法の運用者(=官僚)にとってあまりにもその恣意性を介入させることが容易なものであるというだけではなく、国民にとっても、それを日常の暮らしや生き方に生かすにはいくつかの解釈が成り立ってしまうもので、不都合だからである。

 そこで本章では、第2部での新選挙制度が成立したものとして、その新制度によって生み出され、育てられた本物の政治家たちによって、この日本が真に持続可能な国と生まれ変わり得るための、具体的な道筋と行程を考えてみようと思うのである。それは、第2部で考察してきた諸制度を実現した国家である。

 目指すは次のような国家だ。

国民的の圧倒的多数が、何より暮らしに「安心」と「希望」を見出せ、「明日」を信頼できる国だ。国民の大多数が、「生きるに値する」と実感できるような国である。当然そこでは、真実が大切にされ、誠実、勇気が人間として生きる上での最大の徳となり、対人間関係において思いやりや礼節が最重視にされ、国民一人ひとりが個人としての人権と尊厳が守られ、どんな時にも「生命・自由・財産」が中央と地方の政府によって最優先的に守られている国である。それだけに「嘘」をつくことは最も人の道に外れた行為とされる。なぜならば、嘘をつくことは、人と人とが、あるいは人間集団がそれまで努力して築き上げてきた成果や関係のすべてを一瞬にして台無しにしてしまう行動だからだ。

 心静かに振り返ってみよう。今のような、生きとし生きるものがまともに生きられずに、絶滅種や絶滅危惧種が増える一方の自然にしてしまったのも、また、今のような、人間が人間らしく生きることを難しくさせ、格差を拡大させ、自殺者が増える一方の社会にしてしまったのも、大元を辿れば、「競争」を前提とし、「倫理」や「道徳」を不要として、「損得」を最大の判断基準として、利潤や収益を少しでも多く上げることを至上命題としては、自然をそのための手段とし、社会を、富む一方の富者と貧しくなる一方の貧者の二極化を促してきた資本主義であり、またそれを最大限に進めるグローバル市場経済システムではなかったか。そこでは、「便利さ」や「快適さ」そして「物的豊かさ」ばかりがもてはやされ、「虚飾」や「見栄」や「外見」がそのものの価値を決め、人間の歴史において圧倒的長きにわたって人間を支えてきた自然観、世界観、宗教観は、その資本の論理の前に常に除け者にされてきたのではなかったか。

 こうなればもはや「資本主義」を止揚しなくてはならないのは必然であって、それは好む好まないの問題ではない。また、それと共に遠くギリシャに起源を持つ「民主主義」をも止揚しなくてはならない。なぜなら民主主義は、人間を生かしてくれている自然を構成する生命一般を念頭に置いた政治制度ではなく、あくまでも人間を中心とする人間の都合から見た政治制度だからだ。したがって、これからの環境時代の政治制度は、もはやそうした民主主義ではなく、人間をその一部として含む自然と人間との共生を念頭に置いた政治制度としての「生命主義」としなければならないというのも、もはや必然と言えるのではないか。そうしなくては人間はもはやこの地球上に「存続」=「持続」できない状態に至っているのであるからだ。

16.5 私案としての新憲法「本文」—————————(その4)

16.5 私案としての新憲法「本文」—————(その4)

第十二章 財政制度

第百八a条 経費負担、財政援助、責任

①連邦および州は、この基本法に特別の定めのある場合を除き、その任務の遂行から生じる経費を、別々に負担する。

②州が連邦の委託によって行動するときには、それによって生ずる経費は連邦が負担する。

③金銭給付を伴い、かつ週によって施行された連邦法律は、その金銭給付の全部または一部を連邦が負担する旨を定めることができる。連邦がその経費の半分またはそれ以上を負担する旨を法律が定める時は、その法律は連邦の委託によって執行される。州が経費の四分の一またはそれ以上を負担する旨を法律が定めるときは、その法律には、連邦上院の同意を必要とする。

第百八b条 連邦による財政援助

①この基本法が連邦に立法権限を付与している限りにおいて、連邦は、州および地域連合体の

一経済全体の均衡が乱れるのを防ぐために必要な、または、

二連邦領土内における経済力の格差を調整するために必要な、または、

三自然環境整備を促進するために必要な、

特別に重要な投資のために、州に対する財政援助を行うことができる。

激甚自然災害の事例、もしくは国家の監査能力を超え国家の財政状況を著しく損なう想定外の緊急事態の事例では、連邦は、第一分にも関わらず、立法権限を有しない場合でも財政支援を行うことができる。

②詳細、特に援助の対象となる投資の種類についての最速は、連邦上院の同意を必要とする連邦法律で、または連邦予算法律に基づく行政協定で、これを定める。

この資金は時限的に与えるものとし、その利用はこれを定期的に審査するものとする。財政援助は、時の経過とともに年額が低下するように、これを構築するものとする。

連邦議会連邦政府および連邦上院に対しては、要求に応じて、措置の遂行および達成された改善につき、情報提供が行われるものとする。

第百九条 立法管轄

①連邦は、関税および財政専売について、専属的な立法権を有する。

②連邦は、その他の税収の全部または一部が連邦に帰属する場合には、これらの租税について、競合的立法権を有する。

③州は、地域的な消費税および奢侈税が連邦法律で定められた税と同種のものでない間、またその限りにおいて、これらの租税について立法を行う権限を有する。

また州は、不動産取得税の税率を定める権限を有する。

④税収の全部または一部が州または地域連合体に入る租税に関する連邦法律には、連邦上院の同意を必要とする。

百十条 財政高権、財政交付金

①次の各号に掲げる租税の収入は、連邦に帰属する。

一関税

二消費税

三道路貨物運送税、自動車税およびその他原動機付き交通手段に係る流通税

四資本取引勢、保険税および手形税

五一回的な財産家税、および負担調整を実施するために徴収される調整課税

所得税および法人税に対する付加税

②次の各号に掲げる租税の収入は、週に帰属する。

一、財産税

二、相続税

三、流通税

四、ビール税、その酒税

五、カジノ税

③その他は省略

第百十一a条 近距離旅客交通に対する州の取得分

 省略

第百十一b条 自動車税のための調整

 省略

第百十二条 地域的収入、州間の財政調整、連邦補充交付金

 省略

第百十三条 財務行政、財政裁判所

 省略

第百十四a条 連邦および州の財政運営

 省略

第百十四b条 財政非常事態の回避、財政安定化評議会

 財政非常事態を回避するために、連邦上院の同意を必要とする連邦法律は、次の各号に掲げる事項につき定めを置く。

一、共通の財政安定化評議会を通じた、連邦および週による財政運営の継続的な監視

二、財政非常事態の逼迫を確認するための前提および手続き

三、財政非常事態の回避に向けて財政再建計画を策定および実施するための原則、財政安定化評議会の決議やその基礎となる審議状況については、公表されなくてはならない。 

第百十五条 予算

①連邦のすべての歳入および歳出は、予算に計上するものとし、連邦企業および特別財産については、繰り入れまたは引き出しのみの計上を持って足りるものとする。

②予算は、一会計年度または複数の会計年度につき、各年度ごとに、最初の会計年度が始まる前に、予算法律でこれを確定する。予算法律は、予算案が部分によっては会計年度ごとに異なる軌間執行されることを、あらかじめ定めることができる。

③第二項第一文による法律案、並びに、予算法律の改正案および予算の修正案は、連邦上院に送付するのと同時に連邦議会に提出され、連邦上院は、6週間以内に、また、修正案については3週間以内に、その提出案に対する態度を決定する権限を有する。

④予算法律には、連邦の歳入および歳出、並びに当該予算法律の時限に関する規定のみをおくことができる。予算法律は、次の予算法律の交付を待って初めて、または、第百二十●条による受験があるときはこれより遅い時点で、効力を失うことを定めることができる。

第百十六条 緊急支出

①会計年度の終了までに、次年度の予算が法律によって確定されないときは、連邦政府は、当該法律が効力を発生するまで、次の目的のために必要な一切の支出を行う権限を有する。

ア 法律に基づく施設を維持し、および法律で定められた措置を実施すること。

イ 連邦の法的根拠を有する義務を履行すること

ウ 前年度の予算によってすでに承認を得た金額の範囲内で、建築、調達およびその他の給付を継続し、またはこれらの目的に対して補助を継続すること

② 特別の法律に基づく租税、公課その他の財源からの収入、または事業経営資金積立金が、第一項の支出を充足できないときに限り、連邦政府は財政運営に必要な資金を、前年度予算の最終総額の四分の位置を上限として、起債の方法によって調達することができる。

第百十七条 予算超過

予算の超過支出および予算外支出は、連邦財政大臣の同意を必要とする。この同意は、予見不可能かつ不可避の必要性がある場合に限り許される。詳細は連邦法律で、これを定めることができる。

第百十八条 支出増額法律と収入減少法律

連邦政府が提案した予算の支出を増額し、または新たな支出を含みもしくは将来新たな支出を生じさせる法律は、連邦政府の同意を必要とする。収入の減額を含み、または将来減額を生じさせる法律についても同様とする。連邦政府は、連邦議会がこのような法律について議決することを中止するように要求することができる。この場合、連邦政府は、6週間以内に、連邦議会に態度決定を送付しなければならない。

連邦政府は、連邦議会が法律を議決した後、4週間以内に、連邦議会が議決し直すことを要求することができる。

③法律が、第七十九条によって成立した場合は、連邦政府は、6週間以内にかつ事前に第一項第三文および第四文または第二項に夜手続きをとっていたときに限り、同意を拒否することができる。この期間の経過後は、同意は与えられたものとみなす。

第百十九条 会計監査、免責

連邦財政大臣は、連邦政府の責任を免除するために、すべての歳入および歳出ならびに資産及び負債についての決算書を、翌会計年度中に連邦議会および連邦上院に提出しなければならない。

②連邦会計検査院は、その構成員が裁判官的独立性を有し、決算、並びに予算執行および財政運営の経済性および秩序適合性を審査する。連邦会計検査院は、連邦政府のほか、毎年直接に、連邦議会および連邦上院に報告しなければならない。連邦会計検査院の権限に関するその他の事項は、連邦法律でこれを定める。

第百二十条 信用調達、担保引受

①将来の会計年度における支出をもたらす可能性のある信用調達、並びに人的及び物的保証その他の保証の引受は、その価額が特定されるかまたは特定されうるような、連邦法律による授権を必要とする。記載による収入は、予算中に見積もられている投資支出の総額を超えてはならず、ただし、経済全体の均衡を乱すことを防止するためのものは、その例外とする。詳細は、連邦法律で、これを定める。

②収入及び支出は、原則として信用調達からの収入によることなく、均衡させなくてはならない。この原則に適合すると言えるのは、名目国内総生産との比率が100分の0.35を超えない場合である。加えて、通常の状態から逸脱して景気が推移する場合、その財政への影響は、公共及び不況いずれの場合においても均等に考慮されなくてはならない。本項第一文から第三文までの原則によって認められる信用調達の上限を、債務負担行為が事実において逸脱した場合、それは要監査項目として勘定科目上に記録され、名目国内総生産との比率が100分の1.5の限界値を超える負担については、景気の状況に応じて解消しなければならない。詳細、特に金融取引に関する収支決済、並びに景気動向を考慮しつつ会計基準に基づき年度ごとに行われる実質債務残高の上限規制の手続き、通常の限度から事実において逸脱した債務負担行為の監査及び財政調整についての催促は、連邦法律が、これを定める。激甚災害もしくは国家の監査能力を超え国家の財政状況を著しく毀損する想定外の非常事態の場合、かかる信用調達の上限は、連邦議会議員の過半数の議決に基づき、超過することができる。当該議決には、弁済計画が伴わなくてはならない。本条第六文によって負担された債務の償還は、相当の期間内に行わなくてはならない。

 

第十二a章 防衛出動事態

第百二十a条 防衛出動事態とその確定

①連邦領土が武力によって攻撃され、またはかかる攻撃の直接の脅威が損することの確定(防衛出動事態)は、連邦議会が、連邦上院の同意を得て、これを行う。この確定は、連邦政府の申し立てにより行われ、その際、投票数の三分の二の多数で、かつ、少なくとも連邦議会議員の過半数を必要とする。

②事態が即時の行動を不可避的に要求する状況で、かつ、連邦議会が適時に集会するには克服しがたい障害があり、または連邦議会が議決不能のときは、合同委員会が、投票数の三分の二の多数で、かつ、少なくとも委員数の過半数を持って、この確定を行う。

③確定は、連邦大統領により、第八十二条に従って連邦官報で公布される。これが適時に可能でないときは、他の方法によって公布されるが、事態がそれを許すに至った時には、速やかに連邦官報で追完しなければならない。

④連邦領土が武力によって攻撃され、かつ、権限を有する連邦機関が第一項第一文による確定を即時に行うことができる状況にないときは、この確定は行われたものをみなされ、かつ、攻撃が開始された時点で公布されたものとみなされる。連邦大統領は、事態がそれを許すに至ったときには、速やかにその時点を周知せしめる。

⑤防衛出動事態の確定が公布され、かつ連邦領土が武力で攻撃されたとき連邦大統領は、連邦議会の同意を得て、防衛出動事態の存在についての国際法上の宣言を発することができる。第二項の前提を充たす場合は、合同委員会が、連邦議会に代わるものとする。

第百二十b条 命令権の移行

防衛出動事態の公布とともに、軍隊に対する指揮命令権は、連邦宰相に移行する。

第百二十c条 立法及び行政権限、財政制度

①連邦は、防衛出動事態に対しては、州の立法管轄に属する分野においても、競合的立法権を有する。これらの法律は、連邦上院の同意を必要とする。

②防衛出動事態の間、事態が必要とする限りにおいて、連邦は、連邦法律により、防衛出動事態に対して、

一 公用収容の際には、第二十六条第三項第二文にはよらずに、保障につき暫定的な定めをおくことができる。

二 自由の剥奪について、裁判官が平時に適用される期間内に活動することができなかった場合のために、第百八条第二項第三文及び第三項第一分とは異なる期間を、しかし四日間を上限として、定めることができる。

③連邦は、防衛出動事態において、現在の股は直前に差し迫っている攻撃を防御するために必要な限りで、連邦上院の同意を必要とする連邦法律により、連邦および州の行政および財政制度について、第九章、第九章aおよび第十章とは異なる定めをおくことができるが、この場合、州、地域連合体乗せかつ能力を、特に財政的な観点からも、維持するものとする。

④第一項および第二項第一号による連邦法律は、その執行の準備のためには、防衛出動事態の発生前の時点において、すでに適用することが許される。

第百二十d条 防衛出動事態における立法手続

①連邦の立法に関して、防衛出動事態においては、これまでの条文(    )によらずに、同条第二項および第三項の規定を適用する。

②四球と表示された連邦政府の法律案は、連邦議会に提出されるのと同時に連邦上院にこれを送付するものとする。連邦議会と連邦上院は、遅滞なく、法律案を合同で審議する。法律が連邦上院の同意を必要とする限り、その法律の成立には、その投票の過半数による同意を必要とする。詳細は、連邦議会で議決されかつ連邦上院の同意を必要とする擬似規則が、これを定める。

③法律の交付については、第百二十四a条第三項第二文を準用する。

第百二十e条 連邦議会および連邦上院の代行機関

①合同委員会が、防衛出動事態において、投票数の三分の二の多数、少なくとも委員数の過半数により、連邦議会の適時の集会に克服しがたい障害があり、または連邦議会が議決不能であることを確定した時は、合同委員会は、連邦議会および連邦上院の地位を有し、かつ、その諸権利を一体として行使する。

②合同委員会による法律によって基本を改正し、基本法の全部もしくは一部を失効させ、またはその適用を停止することは、許されない。

第百二十f条 連邦政府の権限拡大

連邦政府は、防衛出動事態において、事態がそれを必要とする限りで、

一 連邦国境警備隊を連邦の全領土に出動させることができる。

二 連邦行政の他、州政府に対して、さらに、連邦政府が緊急と認める時は州の諸官庁に対しても、指示を与え、かつ、この権限を、連邦政府によって指定される州政府の構成員に委譲することができる。

連邦議会、連邦上院および合同委員会は、第一項によって取られた措置につき、遅滞なく報告を受けるものとする。

第百二十g条 連邦憲法裁判所の存続と作用

連邦憲法裁判所およびその裁判官の憲法上の地位、または憲法上の任務の遂行は、これを侵害してはならない。連邦憲法裁判所法を合同委員会の法律によって改正することが許されるのは、それが、連邦憲法裁判所の見解によっても、連邦憲法裁判所の作用能力の維持のために必要である、とされる場合に限られる。連邦憲法裁判所は、かかる法律が発布されるまで、裁判所の活動能力の維持のために必要な措置をとることができる。連邦憲法裁判所は、出席裁判官の過半数をもって、第二文および第三文による決定を行う。

第百二十h条 被選期および任期の延長

①防衛出動事態厨二満了する連邦議会または州議会の被選期は、防衛出動事態の終了後、6ヶ月で終了する。防衛出動事態厨二満了する連邦大統領の任期、およびその職務が任期満了前に終了した場合の連邦上院議長による職務の代行は、防衛出動自体の終了後、9ヶ月で終了する。防衛出動事態中に満了する連邦憲法裁判所の構成員の任期は、防衛出動事態終了後、6ヶ月で終了する。

②合同委員会が連邦宰相を新たに選出する必要が生じたときは、合同委員会は、その委員数の過半数を持って新たな宰相を選出するものとし、この場合は、連邦大統領が合同委員会に提案を行う。合同委員会は、委員数の三分の二の多数で後任を選出することによってのみ、連邦宰相に対し不信任を表明することができる。

③防衛出動事態の継続中は、連邦議会の解散は、これを行わない。

第百二十i条 州政府の特別権限

①管轄を有する連邦機関が、危険を防止するための必要な措置をとることができず、かつ、状況が不可避的に要求するところにより、連邦領土の個別部分において即時の自主的行動が求められるときは、州政府または州政府の指定する官庁もしくは専門員が、その管轄区域において、第百二十四f条第一項の意味での措置をとる権限を有する。

②第一項による措置は、連邦政府により、州官庁及び連邦下級官庁との関係では週の総理大臣によっても、いつでも廃止することができる。

第百二十k条 規範の通用性

①第百二十四c条、第百二十四条e条及び第百二十四g条による法律、並びにこれらの法律の根拠に基づいて発布された法規命令は、それらが適用されている期間中は、これに反する法の適用を排除する。第百二十四c条、第百二十四e条、および第百二十四g条の根拠に基づいて、従前に発布された法律については、この限りではない。

②合同委員会が議決した法律およびこれらの法律に基づいて発布された法規命令は、防衛出動事態の終了後、遅くとも6ヶ月後には失効する。

第九省および第十二章の条文とは異なる定めを含む法律は、遅くとも、防衛出動事態の終了に引き続く二度目の会計年度の年度末までしか、通用しない。かかる法律は防衛出動事態の終了後、連邦上院の同意を得た連邦法律によって改正され、第九章a章および第十二章に基づく規定に移行させることができる。

第百二十l条 合同委員会による法律の廃止、防衛出動事態の終了

連邦議会は、何時でも連邦上院の同意を得て、合同委員会の法律を廃止することができる。連邦上院は、連邦議会がこのことにつき議決を行うように、要求することができる。合同委員会または連邦政府が危険防止のためにとったその他の措置は、連邦議会および連邦上院による廃止のための議決が行われた場合には、廃止しなければならない。

連邦議会は、何時でも、連邦上院の同意を得て、連邦大統領が公布すべき議決により、防衛出動事態の終了を宣言することができる。連邦上院は、連邦議会がこのことにつき議決を行うように、要求することができる。防衛出動事態は、これを確定する前提がもはや失われたときには、遅滞なく、その終了を宣言しなければならない。

講和条約の締結については、連邦法律でこれを決定する。

 

第十三章 軍隊としての自衛隊

第百二十一条 軍隊としての自衛隊の位置付けと役割

自衛隊は日本国の正式の軍隊である。

自衛隊は自国の領土と国民を他国の武力による侵略から守るためと、大災害時あるいは大惨事の生じた際の国民の救助・救出のためにのみ行動し、治安のためには行動しない。

③軍隊である自衛隊を統制(シビリアンコントロール)するのは文民である首相および閣僚である。

自衛隊を統制する文民は、中央と地方の別なく、国土と国民の安全保障のため、時の情勢とその変化を注視し、戦略の専門家の知恵を借りながら不断に最新の実行可能な戦略を練り、用意していなくてはならない。その戦略の中には、軍隊の動かし方も、兵站も、国民からの協力の得方等も含まれる。

 

第十四章 国家反逆罪、内乱罪外患誘致罪

第百二十二条

① 日本連邦に対する忠誠義務違反としての反逆罪、内乱罪外患誘致罪、外患援助罪を構成するのは次の場合である。そしてその行為の結果の発効は認められない。

一 国家に対する忠誠義務違反としての反逆罪。国家の基本的な統治機構を国の内部から暴力的に変革・破壊する内乱罪。国の外部から暴力的変革・破壊を行う外患罪

 より正確に言えば、反逆罪とは、国民が、日本連邦に対して戦争を起こす行為のこと。内乱罪とは、国民が国家の統治機構を破壊し、または国の領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的とした行為のことである。外患罪とは、外国の政府・軍隊などの公的機関と通謀して、日本連邦に対して武力を行使させ、または、日本連邦に対して外国から武力の行使があった時にこれに加担するなどして、日本連邦の敵に敵を利する援助および便宜を与える、国民の自国に対する裏切り行為

二 非合法的手段に訴えて政府を転覆させようとする行為あるいは転覆させた行為、または非合法的手段に訴えて政治権力を奪う行為

三 日本連邦憲法を連邦憲法が定める手続きに従って変えるのではなく、解釈またはその他の理由によって変えようとして、日本連邦憲法体制という法秩序を覆そうとする行為

四 日本連邦憲法に違反する連邦法律の採択あるいは成立を強行し、かつそれを発効させることにより、日本連邦憲法体制を撹乱あるいは変更させようとする、あるいは変更させた行為

② これらの罪については、いずれも国と国民の安全に対する重大な脅威を生じさせることから、連邦議会において刑法を厳格に定める。

③ただし、これらの罪を理由とする権利の剥奪は、この罪に関わった当事者のみに限定され、その親族や子孫に及んではならない。

 

第十五章 憲法の修正および改正

第百二十三条 憲法の修正および改正の発議

  省略

第百二十四条 憲法の修正および改正の手続き

  省略

第百二十五条 議会による憲法改正手続き

  省略

第百二十六条 連邦構成主体の変動手続き・名称変更

  省略

第十六章 終末規定

第百二十三条 基本法の失効

 この基本法は全日本国民に対して適用されるが、日本国民が自由な意思に基づく決断で決議した憲法が施行される日に、その効力を失う。